R プリズムキューブ

 プリズム。光を分散させたり屈折させたりする多面体のことである。

 主にガラスや水晶などの透明な素材で出来ており、ここに光が通ることで屈折率の違いを利用して光を分散させたり、内部で全反射する部分を使用して光の進行方向を変えたりするのに使われる。身近なところで言えば、双眼鏡内部の反転を元に戻したり、一眼レフカメラでファインダーに光を届けたりするのに利用されているのだ。


 今回はそのプリズムがでてきた話だ。




 しかし、怪人はどこにいるのだろうか。想像を巡らすが全く想像がつかない。


 一つは霧星の未開地だろう。モンスターはびこるあの星には、人が隠れ住むのにはちょうどいい場所が山程ある。

 怪人の戦闘能力は相当高いはず。最悪クローンチンピラを生産してけしかければどうにでもなる。

 そのため、ダンジョンのようなモンスターはびこる場所でも安全地帯を構築できるだろう。


 一つは此方側の裏社会。適当なマンションに居を構え、儀式場を設営できるような場所を探して占拠するには無法者を使うのが確実だろう。

 こちら側の星の場合、未開地のような場所は逆に目立つ。

 うかつにうろついているのならもう網にかかっているからな。人混みに紛れているのだろう。


 どちらかな気はするが、そうでもない場所にいるような気もする。

 もっと想像がつかないような……。


 まあいいか。ガチャを開けよう。


 R・プリズムキューブ


 出現したのは透明な正六面体だった。手のひらに乗る程度の大きさの立方体で、内部が切り分けられており、入ってきた光を複雑に反射しているのが見て取れる。

 空にかざしてみれば、表面には光の分散によって細かな文字のようなものが浮かび上がっているのが見えた。


 プリズムは通常、三角柱だが、これはキューブとして出てきた。じゃあそれに意味があるということなんだろうが……。

 入ってくる光を見て合わせるルービックキューブ的なものだろうか。

 そう思って、指をすべらせてみたが特に回るような手応えはない。


 他に思い浮かぶのは角度によって見え方が異なるというやつだが、手の中で回してみても反射が異なって見えるだけで、特に異常と思えるほどの変化はない。

 つまりはまあ、普通だ。


 強い光を与えると変化があるのではと思って懐中電灯で照らしてみたがそれもない。反射光こそ多角的に強くなったが、プリズムそのもののそれのように見える。

 手元で綺麗だなー、という印象しかない。


 懐中電灯ではなく光魔法をぶっ放したらどうかと思うだろう。

 なので撃ち込んでみたのだが、プリズムを中心にあちこちに攻撃力をもった光線をばらまく結果になってしまったのだ。

 プリズムの純度が高ければ起こる現象……のような気がするから、これも景品の効果とは言い難い。

 反射して拡散した光魔法も特に周囲に拡散しただけで威力が増加しているとかそういうこともなかった。


 ……違う。多分これに求められるのは精度だ。正確な光。細く収束されたレーザー光。

 つまり強電ではなく弱電。

 エネルギーではなく、情報通信である。


 えー……。これ、機神に解析を回さないと行けないやつか。

 困るな……。



 後日。兄が機神を使ってプリズムキューブを解析した結果、これは光を使って計算を行う事ができるCPUだということがわかった。

 表面に浮かんでいるうっすら模様はそれの入出力のポイントで、そこに精密に光を入れてやることで、その数値に対応した計算結果を出力することが可能となっていた。

 しかも超高速で計算結果が出る。光の速さで分岐計算しているので速いのは当然なのだが……。


 機械の星のダンジョンマスターのコアも光コンピュータだったが、これはそれに近い技術の演算部分のみの模様。


 まあ、兄はそのまま機神に取り込ませた。演算速度は増大はしたのだが、流石に元の演算能力が大きすぎるためか、そこまでの拡大とはいかなかった。

 でしょうね。

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