R ダンボールハウス

 ダンボール。それは紙と接着剤とで構造をもたせることで一定の強度を得た梱包材である。

 紙から出来ているために非常に軽量であり、また他の梱包材と比較してもある程度の強度がある。

 このためあらゆる荷物の外装として利用され、ネット通販が全盛の今はその利用量は爆発的に増えていると言っていいだろう。


 今回はそのダンボールで出来たものが出てきた話である。







 あの金髪の少女、リナに家の場所がバレた。

 ここのところ、人や怪物に絡まれないように隠形を使って存在感を薄くした状態で登下校を行っていたのだが、今日はそれを忘れていたらしい。

 つけられていたのを振り切れずにそのまま家まで案内した形になってしまった。


 いやまあ、場所がバレてどうのこうの、というのはなさそうだが、心象的にちょっと。

 厄介事に巻き込まれるかもなのでノーサンキューである。


 というか彼女、尾行が下手くそすぎる。

 尾行の心得があまりない私に尾行を悟られるってどんだけだ。

 うわ、明らかにつけられてんな……って秒で気がつくレベルだぞ。

 コンビニの前の看板に隠れたはいいが頭が出てる、とかラノベかよ。

 それを振り切れない私の一般人ポテンシャルで言っても五十歩百歩とは思うが。


 まあ、ガチャは外から見ても認識すら出来ないし、機神テラスは事実上別室であるから見られてもその正体がバレることはない。

 というか、私の監視は彼女一人だから、見られてもバレようがないともいう。


 んー、あー。

 ただなんか余計なことがありそうな気もするんだよなぁ。

 兄に振り回され続けた直感が何かを感じ取っている……。


 はー。

 この話はもう置いとこう。

 今日の分のガチャを回す。


 R・ダンボールハウス


 出現したのは……家だった。

 一般的な民家である。

 平屋建てで、それほど広いものではない。


 ……何より、その名前からわかる通り、総ダンボール製である。

 あらゆる箇所が段ボールでできているのだ。

 家の前にある植木すらダンボールで出来ている。

 駐車場に置かれた車もダンボール製だ。

 ダンボールハウスってそういうものじゃねーよ!


 しかも段ボールでできていることを除けば生活感がすごい。

 自転車が止められていたり、荷物が置かれていたり。

 窓を開けてみると中のリビングには飲みかけのコーヒーと思しきものも置かれている。

 全部ダンボール製だが。


 なんというか……なんだコレ。

 ダンボールで出来ているというのに、普通の建築のように家を支えている。

 強度的にそこまでの力は無いはずなのに。

 いや、計算して設計すれば可能かもしれないが、それはそれ用の専用の構造になるだろう。

 こんな現実の建物を写し取ったような形にはなるまい。


 踏み入って体重を掛けても畳ほどに凹むだけで折れたり曲がらない。

 本当にダンボール製か? と言いたいほど頑丈である。


 これ本当になんで維持できてるんだ。

 水は染み込むから紙製なのは間違いないのに。


 放置してると倒壊とかしそうである。

 早めに片付けさせるかな……。








 後日。兄がダンボールハウスの中から、ダンボールで出来たガチャの筺体を見つけ出してきた。

 当然というべきか、普通に突っ込んだ硬貨は受け付けずダンボールハウス内で見つけたダンボール製の小銭のみを呑む。

 そして回して出てくるのは当然ダンボール製のカプセル。


 ……なんだコレ。

 開けた先にあるのも当然ダンボール製の景品である。

 出てきたのは折りたたみ式のナイフ。

 振るうと空間を一瞬引き裂いて、どんな物でも切断できるやべー代物だ。


 ……。

 マジ?


 ガチャのダンボールコピーなのその筺体?

 中身もダンボールで複製されていることを除けば、ガチャの景品と同じ異常物品なの?


 困る……。

 幸い、ダンボール製の硬貨しか受け付けなかったのでそれ以上回されることはなかったが。


 これで回す手段があったら……労力3倍になるところだった……。

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