R 魔法紋章

 紋章。それはヨーロッパにおいて公的な組織や団体などを示すために使われた図案のことである。

 簡単に言えば家紋のようなものだ。

 また、意匠ごとに意味があり……それらは当然、創作等において魔法と非常に相性がいい。

 魔法とはすなわち意味を見出すことであり、その意味から力を捻出するためだ。

 そのため、本来の紋章の役割から外れて、魔法を使うための紋章が出てくる作品も存在する。


 今回はその魔法用の紋章が出てきた話だ。





 そういえばクラスシステムの恩恵を一番受けているのは、基部で教師として働くサメ機巧天使シャークマシンエンジェルだ。

 主な仕事が魔法技術の伝授であるため、必然的に授業の形式をとる形となる。

 すると、教師のクラスが恐ろしいほどビタ、とハマるのだ。


 教師のクラスは派生も複数存在するが、共通する特徴として自身が持つ知識を正確に生徒に伝授する。

 これが魔法という未知にして理解し難い技術を伝授するためにメチャクチャ効果的だったのだ。


 もちろん魔法だけではない。

 様々な工学の知識の伝授にも役に立っている。

 資料の編集には編集者や学者などの派生クラスが効率を引き上げているし、実地での技術の伝授では技師などのクラスが正確な伝授を可能にしている。


 結果として、それまで隔絶しすぎていて説明に時間がかかり、結果効率が微妙だった知識の伝授がスムーズに進むようになった。

 ただあまりにスムーズになりすぎて、変な信仰心とか生まれてそうで怖い。

 ほとんど神託みたいな勢いだしな。


 まあ集まっている調査団も各国のエリート。

 元々頭のいい人たちだから大丈夫だろう。

 きっと理解し始めるフェーズに入ったと思ってもらえるはず。


 はー。

 あっちの悩みは置いておいて。

 ガチャを回そう。


 R・魔法紋章


 出現したのは水晶球だった。

 透き通った……というか、透明な水晶の中になにか赤い紋章が浮かんでいる。

 それはこちらを見つめるかのように、動かすとその角度を変化させる。


 魔法……紋章?

 令呪とかそんな呼ばれ方をしそうな、タトゥーにも似た紋章である。

 それは竜の頭にも見える形状をしているが、なまじ単色で描かれているため断言はできない。

 他の形状にも見えなくもないからな。

 手裏剣とか。


 で……それが水晶の中に浮かんでいるわけだが。

 これはどういう……どういう道具なんだ?

 さっぱりわからない。


 魔力を流すと、反応して光り出すが……それ以上なにかを引き起こすという感じでもない。

 手応えもあまりない。


 創作なんかではこの球体から人の体に移して、紋章由来の魔法を使える! とかそういうヤツなのだが。

 全然そういう反応を示さないからお手上げである。


 なんだ?

 適性かなにかに引っかかっているのか。

 私だから使えないのか。

 なにか専用の魔法が必要なのか。

 そもそも使い方が違うのか。


 何やっても反応しないからどうしようもねえなこれ。

 ぶん投げて壁にぶつけても反応なし。

 こすりつけても反応なし。


 わっけわかんねえ。

 諦めるか!





 後日。なぜか兄が使い方を見つけた。

 世界樹の中を調査するにも足が必要ということで、兄は機神にサソリ型のロボを作らせていたのだ。

 不整地を歩くために多脚型で、あと木々を切断できるハサミと無意味に高出力ビームが出る尾を付けた乗り物である。

 あと魔力を使って地ならしもできるようにしてある。


 で、魔法紋章をどう使ったというと。

 その乗り物の胴体部分に軽く置いたら光を放って融合した。

 結果、胴体に紋章が刻まれていたのだ。


 いや……うん……なんだこれは。

 紋章が刻まれた結果、炎をまとって突撃できるようにはなったが、ぶっちゃけ無駄機能……というかいらない機能である。

 その程度なら元から付けられる。


 と、思っていたら兄が操作UIから何かをいじって……。

 尻尾の先から火球を発射したのだ。

 発射と同時に紋章が光っていたため、おそらくは紋章の機能で引き出して。


 えっ……つまりなにか?

 あれは乗り物をマジックアイテム化する紋章?

 なんか違う気がするが……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る