R ランプ

 ランプ。燃料を燃やして火を灯す照明器具だ。

 ただ日本でランプというと、いわゆるアラジンが持つ魔法のランプのような形状のものを思い浮かべるだろう。

 中に魔人が封じ込められており、擦ると願いを三つまで叶えてもらえるという物。

 願いを叶えると魔人が開放されたりされなかったりする。

 まあ願いを叶えるアイテムがろくでもないのは古今東西変わりない。


 今回はそのランプが出てきた話だ。






 サメ機巧天使シャークマシンエンジェルへのクラスの普及で輸出できる商品が大幅に増えてしまった。

 魔法を利用したマジックアイテムやそれに連なる工芸品の数々を生産可能になったため、それらをお土産として販売しだしたのだが売れる売れる。


 まあまずマジックアイテムだから売れる。

 内容こそ子供の玩具のようなものばかりではあるが、逆にそれがお土産としての価値を高めている。

 内容がチープだからこそ逆に安全であるというわけだ。


 次に無駄に精緻な工芸品。

 マジックアイテム加工の延長線で作ったものだが、サメ機巧天使シャークマシンエンジェルの職人を遥かに凌駕する器用さによってその緻密さは並の工芸品を超えているのだ。

 そのため、お偉方に手土産として買っていく需要が高い。


 あと、そもそも宇宙エレベーター産のお土産って今めちゃくちゃウケが良い。

 オークションで目が飛び出るような金額で転売されているほどだ。

 どっから流れたんやろなぁ……。


 これまでなんというか実用品とか素材とかしか出してなかったのもあってか、工芸品は出したら出しただけ売れる状態だ。

 金の多寡など意味がない状態であるにも関わらず、兄は商売っ気を出してどんどん補充する始末。


 まあ、目玉が増える分には良いか……。

 あんまり普通じゃない部分ばかりクローズアップされると変なとか生えそうだしな。

 宗教団体が生まれるのは困る。


 はー。

 ガチャ回そ。


 R・ランプ


 出現したのはアラビアンなランプだった。

 真鍮で出来た優雅な作りで、美しい金色をしている。

 細長くなった吹出口から気化した油に火をつける構造のようだ。


 アラビアンランプ……。

 なんというか見るからにアレである。

 アラジンのランプである。

 擦ると魔人が出てくるアレだ。


 と、いうことは……使い方は擦る?

 普通に火を付けてみても特に異常なことは起こらない。

 比較的きれいに火が灯るだけである。


 ふむ。

 やはりこすってみるべきか。

 一般的な使い方をしても普通なのだから一般的でない使い方をしてみるべきだ。


 そう思って台拭きで拭いてみた。

 途端、ランプの口から火炎放射器のように猛烈な勢いで炎が吹き出し……。


 吹き出したまま止まった。

 ということはこれは火炎放射器かな?


 いや、なんか炎の音と一緒になにか声のようなものが聞こえる……ような気がする。

 うーん、多分気のせいだな。

 メラメラパチパチ、音がうるさいだけである。


 あとこの炎、見掛け倒しで木材に触れても燃えない。

 ほとんど熱もない。

 炎の形をしたエフェクトというか……。


 いやまあ、燃え移ってたらテラスが大変なことになっていたからこれはこれで良かったと言うべきか。

 なんか中途半端な道具だな……。






 後日。兄がランプから炎の魔人を呼び出すことに成功した。

 ただし30秒だけ。


 あのランプ、やっぱり魔人が封印されてるタイプだったのだ。

 炎の勢いを操ってそれを体として出現する魔人で……炎はランプの中身のオイルを消費する。


 擦れば擦るほどより大きな炎を出せるランプで、かなり大きな炎を出さないと魔人は呼び出せない。

 魔人を呼び出せるほど大きな炎を出すと、あっという間にオイルを使い切ってしまうのだ。


 オイルを補充して呼び出すたびに、なにか言いたげな表情をしてすぐオイル切れで引っ込む魔人。

 なんか可愛そうになってきたがオイルを補充し続ける手段はない。


 なんというか……。

 ひでえ景品である。

 結局兄は火炎放射モドキとしておもちゃにしだすし……。

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