R 宅配ボックス

 宅配ボックス。それは忙しい現代人のために用意された、不在でも宅配便を受け取れる箱のことである。

 特に近年、宅配の需要が高まっているため、不在による二度手間を無くす目的で普及が急がれている。

 基本的に外部から鍵を掛けられるようになっていて、それの解除は内側から、もしくは所有者のみに可能な方法によってセキュリティを担保しているのだ。


 今回はその宅配ボックスが出てきた話だ。







 クラスシステムは本当に広範である。

 特に条件が設定されておらず、適性も必要としないクラスだけでも10万を超えるほどだ。

 その総数故に適性と嗜好に沿ったクラスが優先的に表示される。


 まあそれだけ数があると変なクラスも結構あるのだが。

 【賽子博徒ダイスギャンブラー】とかピンポイントすぎる上にろくでなししかつかなさそうなクラスだったり、【動く死体ウォーキング・デッド】とかいう死んでいないと効果を発揮しないクラスだったり、【無駄な才能アンチジーニアス】とか獲得すると適性や才能が激減する反適性反才能の謎クラスがあったり、【小さな羽虫リトルバグス】に至ってはなぜか人が獲得できる虫用のクラスだったりする。


 そんなわけわかんないクラスでも、サメ機巧天使シャークマシンエンジェルには兄の実験根性が染み付いているのか獲得している個体がちらほらいたりするのだが。

 まあレベルを上げると別のクラスが開放される可能性もあるから上げておく価値はある。

 でもそれなら先に一般的なクラスの派生を確認しておくべきなのでは……。


 考えても無駄そうではある。

 特に指示なくサメ機巧天使シャークマシンエンジェルが自主的にクラス選択してるからなぁ……。


 まあいいか。

 ガチャを回そう。


 R・宅配ボックス


 出現したのはコインロッカーのような形をした箱だった。

 白塗りが施されており、タッチパネルのようなものが一枠を埋めている。

 金属で作られていることが手触りからも分かり、かなりの重量感もある。


 宅配ボックス……というにはあまりに枠が多い。

 一般的な段ボール箱を入れられる大きさの枠が6枠、縦長の箱を入れられる枠が2枠、何を入れるのかわからないでかい枠が1枠。

 なんというか、個人用にしては枠が多く、マンション用には少なすぎる。

 駅前とかにおいてあるコインロッカーを一組だけ持ってきたと言われたほうがまだわかりやすい気すらする。


 まあいいか。

 とりあえず一つづつ開けてみよう。

 でかい枠を開ける。

 空。

 長い枠を開ける。

 空。


 そんな感じに、順繰りに開けていって中身がどうなっているのか確かめていった。

 特におかしなこともなく普通の作りである。

 容積が拡張されていたりもしない。


 ……ん、一つだけ開かない。

 すでになにかが入っているらしく、タッチパネルからロックを解除しないと開けられないようである。


 ……うわあ、なにかが入っているってもうイヤすぎる。

 内部に設置された感圧板に物が載っているとロックが掛かり、付属の説明書についていたロックナンバーを押すことで解除、中身を取り出せる仕組みになっているが。

 ……説明書?


 ……もしかしてこの中に入っているの、説明書では?

 取り出せないじゃん!








 後日。日に日に開かなくなる枠に怯えながら兄がサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを使った総当りで開けることに成功した。

 中に入っていたのはやはり説明書と……得体のしれない小包だった。


 差出人の名称はなく、宛先が私の名前になっていること以外はぱっと見た感じ異常なところはないが……。

 兄は躊躇なく開封する。

 中身は浄水器の交換用フィルター。


 ……え?

 なんで?

 なんでそんなものが……?


 他の開かなくなった枠も同様に開けていくと、そこには見覚えのあるダンボールが。

 それはこの間兄が抽選に当たって届いたばかりのゲームハードの入った箱だった。


 ……んんんん?

 もしかして……。


 ご近所の宅配便をコピーして入れてる……!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る