R 踏切
踏切。それは道路と線路を交差するために設けられた設備だ。
線路が地上を走るように設置されている以上、それは境界として機能する。
巨大で高速な乗り物がその上を走るため不用意に侵入するのは危険なのだ。
それを安全に……乗り越えて通行するために用意されているのが踏切である。
通行スケジュールに沿って電車が来ない間一時的に通行可能にするようになっているのだ。
今回はその踏切が出てきた話だ。
邪神の素材を利用して、邪神の本体に情報攻撃を仕掛けるサーバーを機神が作成した。
人間を一発で傀儡に出来る洗脳系の魔法と人間を一発で廃人に出来る精神攻撃系の魔法の組み合わせと、
簡単に言えば……一秒間に10万回洗脳魔法を相手にかける機械だ。
また邪神の本体に接続する都合上、危険である。
そのため電源まで内蔵して完全にスタンドアロンで動作する構造だ。
もし逆に攻撃されたら自壊するようになっている。
それでもダメだったら
それを……10機。
兄は完全に勢いで生産した。
これだけあれば出力負けはしないだろうとかなんとか。
結果はというと。
10機起動からわずか1分で邪神の本体の反応がなくなった。
反応を見るために生かしておいた噴出孔の邪神が突然、枯れたように死んだのだ。
えっ……。
えっ?!
いやまさかそんな……。
仮にも神の名を冠するものが……。
まあいいや。
ガチャ回そ。
R・踏切
出現したのは踏切だった。
土台から切り取られたようにその場に乗せられるように出現したそれは、僅かな傾斜があるために地面ときっちり接している。
それはすでに踏切が降ろされていて、警報灯も点灯していた。
だが警報音だけは鳴っていない。
そして……これの一番やばいところは。
この踏切の向こう側に、「望郷」が広がっているところだ。
夏の青空が広がり、傍らにはひまわりが咲く。
舗装されていない土がむき出しの道路が地平線の先にまでずっと伸びている。
もはや日本のどこにもないであろう原風景が線路の向こう側に広がっているのだ。
その風景が私の心をかきむしる。
私自身、その風景を見たことがないというのに、その光景を「懐かしい」と感じるのだ。
そんな気持ちを覚えるほど、私は老けていない。
私は精神防御の魔法を使う。
まるで煙のように、懐かしいという気持ちが消えていく。
くそ、これ無理やり懐かしいと思わせるのかよ!
ふざけんな!
後日。兄が勢いで踏切を乗り越えたところ、無から出現した電車に跳ねられた。
本当に突然である。
そんな兆候もなかったのに兄が踏切の中程についたあたりで突然電車が現れて兄を轢いたのだ。
すでにレベルの上がっている兄は電車に跳ねられた程度ではダメージを受けないが、無理やり侵入しようとすると何度でも電車が出てくる。
まるで向こう側に行けないように……というか、踏切が入ってきた人間を餌にするために轢き潰しているようである。
なんなんだよこの踏切。
バーもずっと降りっぱなしで開かないし、向こう側に行こうとすれば電車にはねられるし。
ミミックか?
ミミックの類なのか?
人を食う妖怪なのか?
あ、兄が
無理やり向こう側に行って……青空を手で叩いた。
え!?
それ書き割りなの!?
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