R 大学ノート
大学ノート。パステルカラーの表紙と糊付けされた背表紙をもつ罫線の引かれたB5サイズのノートである。
またその名称の由来は、初期に作られたものが非常に高品質な素材を利用していてとても庶民に手が出せる値段でなかったため、東大生ほど勉強ができなければ使えない、と言われたところから来ている。
今回はその大学ノートが出てきた話だ。
あれからいくつか噴出地点を潰して回っているが、邪神に関する情報は余り集まらない。
まあ当然といえば当然である。
何かを作ったり、何かを記録したりする生き物……生き物? ではない。
対訳となるなにかを見つけるのも、実質砂漠の中から小さな砂金を見つけ出すようなものだ。
だがそこは機神。
邪神を解体して得られる素材や、邪神の本体との接続に使っているなにかを読み取ることで少しずつ情報を集めている。
本当に微々たるものだが……。
その過程で、それっと瘴気の持つ生物改造の能力を獲得していた。
機神が合成したガスを浴びせかけると、生き物が変質して違う生き物にへと変貌するのである。
その生き物は機神の眷属となり……サメ機械化される。
ああー……。
やはりそこでもサメと機械。
存在の根底にサメが存在している。
まるで呪いのようだ。
もっとマシな生き物になったり……しないか。
なるなら最初からサメもどきなんて出てこないしな……。
はー……。
ガチャ回そ。
R・大学ノート
出現したのは大学ノートだった。
ピンク色をした表紙のもので、中には罫線が引かれている。
作りそのものは普通のものだ。
当然表紙裏に説明書きなんかがあったりもしない。
そう、どう見ても普通なのだ。
表紙になにかタイトルのようなものがついていたりしない。
中になにやら魔法陣やら怪しい呪文が書かれていたりしない。
普通の大学ノートだ。
ということは……書くことで何かが起こる、ということのハズだ。
流石にページを紙飛行機にして飛ばしたらなにか変な効果が出るとかそういうものではないだろう。
そう思って部屋からシャーペンを取ってくる。
そして、1ページ目にサラサラサラ……と、五十音を書いてみた。
書いている間は反応がなく、絵を描かないといけないかな? と思っていると。
突如、文字が浮かび上がり、動き始めた。
ノートから脱走してうごめくように走り出す。
うぞぞぞぞ、と背筋に虫酸が走る。
シャーペンの文字が蠢いているのだ。
はっきり言って気持ち悪い。
大量のアリが突然ノートの上に発生したような感じだ。
しかも書かれた文字の形にそってその動きは異なるのだ。
這いずるもの、器用に突き出た文字を足のように使うもの、全身をバネのように使うもの、別れたパーツを投げて引っ張る動きをするもの……。
ばらばらの動きをするものだから余計に。
気持ち悪いんじゃあ!
後日。兄が逃げ出した文字をケースに入れて飼育してみていた。
抜け出した文字は暗いところを好むらしく、テラスの隙間から下に落ちていったのだが、兄はそれを観察したいと虫を飼育するケースに文字を流し込んだのだ。
ただ雑に流し込んだだけなので黒い水が動いているように見える。
しかも……共食いをしだした。
同族の文字をバリバリと……いやどこに口があるの? と言いたくなる動きで捕食しているのだ。
食われた側はその体……というか文字が欠けていき、最後には動かなくなる。
あ、こいつら死ぬんだ……と思っていると。
ものの30分程度で、全部の文字が動かなくなった。
少しだけ厚みのある黒鉛の塊が重なって山になっている。
き、気持ち悪い……。
切り抜いた文字みたいなのが大量に重なっているだけでもだいぶゾッとするのに。
これがさっきまで動いていたと考えると、だいぶ気持ち悪い。
……え、ということはこれテラスの下に散らばってるの。
イヤぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます