R ジャック・オ・ランタン

 ジャック・オ・ランタン。黄色いカボチャを飾り切りすることで髑髏に見立てた季節の飾り物だ。

 主にハロウィンに飾られる。

 もともとはアイルランドやスコットランドあたりの伝承で鬼火のような存在だったが移民などで利用される作物が変化した結果かぼちゃに落ち着いた。


 今回はそのジャック・オ・ランタンが出てきた話だ。







 瘴気に対して体制を持つ服を使い潰した結果、よく瘴気に浸したヒヒイロカネを防護剤に使うと瘴気を遮断出来る事が判明した。

 本当になんでもありだなあの金属。


 作成する工程で濃厚な瘴気を加圧して液体化させ、それをヒヒイロカネと合金……合金? することでどす黒い紫色をした金属が出来上がる。

 この金属は瘴気に対して異常なほど耐性を持っていて、なんと雑に作ったヘルメットをかぶせた生き物を瘴気に突入させても変質しないほどなのだ。

 ……どういう原理で防護してんのそれ?


 詳細は不明だが金属自体が瘴気を吸っているようであり、巨大な金属塊を用意して瘴気を吸わせる実験も行っている。

 瘴気をよく吸った金属とヒヒイロカネを合金するとまた質量が2倍に増える……といういつものアレ。

 本当にわけがわからない金属である。


 で、調査部隊はこの瘴気ヒヒイロカネで全身を覆って進むわけだが……。

 どす黒い紫色で全身を覆われると、悪魔というか。

 威圧感がすごい。


 いや、金属光沢からしておどろおどろしい代物を全身隅々まで、液体でも頭からかぶったかのように身に着けているものだから。

 地獄から来たと言われても納得してしまうぐらい邪悪な見た目になっているのだ。

 デザイン自体はまともなんだがな……。


 まあサメ機巧天使シャークマシンエンジェルの武装姿とかどこかに見せるわけではないから見た目に拘る必要はないか。

 ガチャ回そ。


 R・ジャック・オ・ランタン


 出現したのはかぼちゃだった。

 一抱えもある大きなかぼちゃで、顔が飾り切りされている。

 いわゆるジャック・オ・ランタンというやつだ。

 ハロウィンなんかに並べられがちなアレ。


 で……なんか中に青白い火が灯っている。

 中に電飾のようなものが無いのは頭の部分が開くようになっていて開けられるから確認済み。

 つまり、顔から見たときだけ中に青白い火が見えるのだ。


 ふうむ……。

 なんなんだろうなこれ……。

 そう思っていると。


「ガハハハ! なにか悩みはないか! 俺様が聞いてやる!」


 と若干チープなスピーカーから出たような声がジャック・オ・ランタンから鳴り響いた。

 うん!?


「ガハハハ! なにか悩みはないか! 俺様が聞いてやる!」


 あっ、ループした。

 なるほど、NPCみたいな……。

 それでかぼちゃ頭に相談するのか。

 なんというか……微妙なやつだ。

 誰かに見られたら笑われるやつすぎる。


 まあ、試さないわけには行かないので、とりあえず明日の天気でも聞いてみるか。


「明日は……晴れ! ラッキーアイテムはドラだ! ガハハハ!」


 占いロボットかな?

 しかもラッキーアイテムがドラって。

 持ち歩けるものじゃない。


 半端に役に立たない物って……困るよね!

 なお、翌日の天気は曇っていた。






 後日。兄がまさかの使い方を見つけ出した。

 このジャック・オ・ランタン、基本的に相談に対して占いで答えるのだが、前述の通り精度が甘い。

 だが、逆に占いを行ってその解釈を行わせると途端に精度が跳ね上がるのだ。


 つまり。

 こいつの前で悩み事を確定させ、自分の手で占いを行い。

 その解釈を聞くことで、擬似的な未来予知が可能なのだ。


 兄はこれを使って……また宝くじを当てにかかった。

 10面ダイスを使って、どの番号が正解かをサイコロを振り続けることによって探り出したのだ。

 こと、解釈にかかっては超精度のジャック・オ・ランタン。

 未来の宝くじの桁とサイコロの出目が一致した時点で、一致したと回答する。


 あ、ああ……うん。

 それでやることが宝くじなのね、兄ぃ……。

 今更金とか必要な人じゃないでしょ、兄ィ……。

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