R ミニチュア
ミニチュア。なにかを模した小さな造形物を指す言葉である。
大体の場合手のひらに乗る程度のサイズであり、主にディスプレイするためにコレクションするアイテムだ。
特にデザイン性の高いもの、再現性の高いものはコレクションとしての価値が高くなる。
また個人で制作する人もいる。
小さいだけに精密な作業が要求され、それがうまくいくと強い達成感があるためだ。
今回はそのミニチュアが出てきた話だ。
うーん、困ったぞ。
宇宙エレベーターの調査団の数はどんどん増え、今では基部の上に用意した建物を埋め尽くし、一つの街として機能するレベルに集まっている。
そのたびに建造物を解放し、その内部にダンジョンの機能で中身をでっち上げることで急速な速度で設備を用意しているのだが。
全然間に合ってなくて客船持ち込んだ国がある。
確かに生活の拠点としては申し分ないだろうけども。
しかも一度やるやつが出ると、どんどん真似する国が出る。
宇宙エレベーターの周囲には大小様々な船が停泊し、それらがそれぞれの国の領土として扱われることを利用して、お互いに牽制をしているようなのだ。
流石に軍艦はお帰り願っている。
どの船も現状吐き出しているものをその場で分析できるようにしてあるぐらいではある。
情報のやり取りを密にできるように通信装置もかなり強力なものが積んであるらしい。
めちゃくちゃ期待されている……。
世界中から注目されるというのはこういうことになるのか。
いやまあ、魔法とか吐き出した都合、それを警戒し、ついでにドンドコ取り込もうという姿勢は理解できるが。
政治が絡むとどこからどこまで、どういう順番で吐き出せばいいかわからなくなるから困るね。
適当に吐き出してもあっさり持って帰ってくれるぐらいが丁度いいが、完全に夢物語でしか無い。
政治に思いを馳せていても、まあなるようにしかならないので、今日の作業であるガチャを回す。
R・ミニチュア
出現したのはミニチュアだった。
手のひらに乗るサイズのもので、極めて精密な造型をしている。
細部にまで作り込まれているので窓のようなところを覗き込むとその中身まで作られていることすら見て取れるのだ。
妄執に囚われた職人が人生を賭して作り上げたと言われても納得するほどのクオリティだ。
まあ、これが
本当に出所がわからない代物が出てくるとそのたびに困惑しているが、妄執狂レベルの造形物が出てくるとそれはそれで別の困惑がこみ上げてくる。
一体誰がこんなもん作るというのか、という感情だ。
テラスまで作り込まれていて、優雅にくつろいでいる私の姿までそこにあるんだぞ。
作ったやつは完全に狂っている。
手のひらに乗るサイズの機神の、その背面のテラスにいる私って、これ本当にどんなサイズだ。
ぶっちゃけ現代技術で作成不能なサイズじゃなかろうか。
ああ、あと完全につくりこまれているので、歩く。
声を掛けると声のした方に四本の足でよたよたと歩く。
内部まで作り込まれてるのか……。
流石にレベルまでは存在しなかった。
歩けるだけだな。
後日。兄が機神に複製させて、宇宙エレベーターの基部で売った。
さすがに内部構造はオミットして複製したものだが、外装の精密さはほぼ完全に再現されており、テラスの作りすら完璧に造形されている。
流石に私の姿は削り取られているが。
あと手足や機神が可動もする。
複製され、売店に並べられた機神のミニチュアは飛ぶように売れた。
お値段600万円という明らかに高すぎる値段と、あえて神の像として銘打って売ったにも関わらず、である。
いやまあ使われている超技術を鑑みれば手を出す価値はあるかもしれないが。
今なら何でも高値で売れるんじゃないかと兄がすごい悪い顔をしている。
やめなさいよねそういうの。
そういう詐欺をすると後々面倒なことになるんだから!
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