R 変身ベルト

 変身ベルト。日曜朝の特撮ヒーローの象徴的な装備である。

 ちなみにベルトを使わないタイプのヒーローも普通にいる。

 近年の傾向としては、特別なアイテムをベルトに嵌めることでそれに宿っている力を引き出して変身する代物だ。

 そして特別なアイテムを巡って戦ったり、戦わなかったりする。

 怪人とヒーローが同じアイテムを使って変身するという、ダークヒーロー的な要素を抱えていたり、いなかったりするのが話にアクセントを添えるのだ。

 でも裏モチーフがドラッグなのが存在するのはどうかと思うよ?


 今回はその変身ベルトが出てきた話だ。










 地球側の開放が済んで、色々やり取りをやっている裏で、霧星でも似たような作業をしていた。

 こちらでは宇宙エレベーターを開放するなどの作業をしたわけではない。

 他所に国として認めてもらうことで、余計なちょっかいをかけられないようにする作業だ。


 霧星における人類の生存圏はめちゃくちゃ狭い。

 いろんなところで危険なモンスターが湧くため、それを追い払い続けるコストが高くなりすぎるためだ。

 どう転んでも人が死ぬ場所では人は生きていけない。


 我らが宇宙エレベーターがある場所は、そういう危険地帯の1つである。

 RPGなら魔王城とかあってもおかしくないレベルの僻地。

 サメ機巧天使シャークマシンエンジェルなら自由に空を飛んで移動できるため地形に足を取られることもないが、人間は違う。

 こんなところまで好き好んで踏み込んでくる国も無い。


 なので、兄は周辺にサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを放出して、国をでっち上げた。

 建造物を立て、畑を作り、産業を興す。

 静止衛星軌道ステーションでやったことをそのまま同じように、霧星の土地でやったのだ。


 これで人が来ても、サメ機巧天使シャークマシンエンジェルの国だと認識されることだろう。

 そして宇宙エレベーターもその国の建造物だと。


 なお、国をたてて都市を作り上げた時点でダンジョンの一部に取り込まれてダンジョン扱いになったのは内緒だ。


 さて、ガチャを回すとするか。

 いい加減良いもの出てこないかなぁ……。

 いや出るわけないんだけど。


 R・変身ベルト


 出現したのは、日曜朝にやっているヒーローのベルト……に似たものだった。

 似てはいるのだが、デザインが違う。

 四角形の箱にひし形の装飾が施されているのだが、右側になにかを装填するようなスロットが存在している。


 似ているが、違うものだと思う。

 スマホでささっと調べてみたが同じ形のものは存在していない。


 で、これはどうやって使うものなんだ。

 ベルトというには、巻いて使うものなんだろうが、このスロットはどういう意味があるんだ。

 なにかを装填する?

 多分元ネタと同じなら装填して変身する、が正しい使い方のはず。


 が、その装填するべきアイテムが存在しない。

 私は……どうすれば良いんだコレ。


 こういうとき兄は必ず雑になにかをやる。

 そしてそれからヒントを得る。


 だから兄のやり方を真似てみることにした。

 建材の残りのレンガを手に取り、そのスロットへと装填してみたのだ。


 スロットにレンガがはまり込むと同時、ベルトが軽快な音を流しながら、周囲にレンガの柱のようなものを生成しだす。

 それが光の塵になると、私の体に向かって流れ込んできたのだ。


 光が収まると同時、私の姿は変わっていた。

 黒いしっかりとしたインナースーツの上に、レンガでできた装甲を纏ったヒーローの姿に。


 ……、弱そう!

 装甲をレンガで軽く叩いてみると、脆いのかあっさりと剥離を起こす。


 レンガで変身できるのはともかく。

 いや変身できるのでもだいぶあれなんだが。


 めちゃくちゃ動きづらいよこれ!

 全身に石でもくっついてるみたいに重い!











 後日。兄が、ベルトにサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを装填して変身した。

 私がレンガで変身したときよりもヒーローらしいデザインにまとまっている。

 レンガで変身したときの写真、撮ってあるけどどう見てもようがんまじんだもんなぁ。


 しかもスーツとしての性能も段違いだった。

 垂直跳びで200メートルぐらい飛び、飛行能力も備え、身体能力も大幅に向上している。

 レンガなんか全身が重いだけで、装甲も叩くだけで割れるダメダメだったというのに。


 そう、考えていたら。

 兄が肉まんを装填した姿に変わっていた。

 フカフカの皮と、中の肉のあんが全身にぶちまけられて配置された、前衛的な姿。


 なんだよそれ!

 

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