R 亡国の歴史書
歴史書。その国がたどった歴史を記した本のことである。
多くの場合、自らの国が由緒あるものだと残すために書かれるもので、敵国のことは悪辣に書かれていたりする。
また、その関係で偽物の歴史が残され、後世で混乱をもたらすことも多い。
そのため、歴史の研究はいろいろな地域に残る歴史の情報を突き合わせる必要があり、大変な作業だと言えよう。
今回は滅んだ国の歴史書が出てきた話だ。
宇宙エレベーターの基礎部であるターミナルを開放したことによって、色んな国が調査という名目を掲げて使節団を送り込んでくるようになった。
現状、頼み込まれてもエレベーターの上に上げることはできないが、兄がばらまいておいたダンジョンの品々のおかげで、調査団の目をそちらに向けることに成功している。
しかしめんどくさいのはうちだけに品物を降ろせって奴らである。
アメリカやら中国やらの……強行派閥の人間だと機神は分析しているが……。
利権を握ろうと必死でうっとおしい。
なおそれに対応する
別に欲しい物とかないので殿様商売である。
お前らの提示する条件のものは大体機神が作れる。
日本は意外としたたかで、沖縄の開発に取り掛かったようである。
これから直接貿易するにしても、直近の港として寄れるのはアドバンテージであり、利益をもたらすと判断したようだ。
関税も取れるしな。
近い≒便利≒儲かる。
あまりにもわかりやすい方程式だ。
わかり易すぎるから私も沖縄に投資しておこうかな……。
……金ないわ。
はー。
がっかりしたところでガチャを回そう。
なんか久々な気がするな。
毎日回していたはずだが。
R・亡国の歴史書
出現したのは分厚い本だった。
しかもだいぶでかく、そして重い。
小さなテーブルに乗せればその天板がその本だけで埋まりそうな大きさである。
それに装丁が厳重で、革のように見えるがなにか科学的に合成されたようにみえる素材と、めちゃくちゃ硬い素材を張り合わせて表紙が作られている。
いや本の装丁にどれだけの労力を使っているんだ。
ついてる鍵もやたら厳重で、鍵穴が4つも見える。
まあ厳重にロックされていても、鍵は開いているんだが。
初めから開いているから、多分鍵をかけられる仕様ってだけなんだろう。
とりあえず表紙をめくってみる。
表紙は装甲のような装丁が施されているだけでタイトルもなにもないからな。
めくった先には、
いや、細部こそ異なる。
思いっきり宇宙エレベーターを取り込んで一体化していたり、機神部分のデザインが変わっていたりこそしている。
私は、それを見て……そっと表紙を閉じた。
よし、見なかったことにしよう!
後日。兄はその歴史書を機神に閲覧分析させた。
表紙に使われている革は核攻撃にも耐えるであろう強度を持っていることがわかったり、情報を取り込んだ機神の姿が進化して歴史書に載っていた姿に変貌したりといろいろあったが……。
一番やばかったのは、分析が終わったと同時に、その存在が世界と矛盾したのか、突然歴史書が消滅したことである。
まるでバグでも走ったかのようにノイズ……としか言いようがない現象が発生して、歴史書は消え去ったのだ。
え、えー……。
こわ。
やっぱあの歴史書は未来から呼び出された本だったのか?
機神の現在レベル、10万4292。
歴史書に載っていたレベルは、39兆4825億3482万5925。
一体何が起こったって言うんだ……。
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