R 無敵病院

 病院。医学に精通した医師が常駐し、治療を受けることができる施設のことだ。

 治療を行うために、常に最新の設備を備え、様々な技術を導入し、そして衛生管理を徹底している。

 人の命は繊細であり、吹けば飛ぶような脆さを持っている。

 それを必死に食い止め、救い上げるためにその力とあり方を振るい続ける場所なのだ。


 今回は無敵だ。











 竜鮫神国(ひでえ名前だ)の国土は、氷の星1つと宇宙エレベーター5基と霧星における宇宙エレベーターの周辺だ。

 地球側ではまだ承認を得られていないが、国家とは名乗りあげれば立ち上げる事ができる程度のものでしか無い。

 それを守るだけの政治力と軍事力があるかどうかが結局のところ国土を保証する。


 他の場所はどうなのだ、と言われると大変困るのだが、実は全然調査が進んでいない。

 機械じかけの星……というか、多分SFに出てくるダイソン球と思しき星は未だに反応がなく、調査を出していいものなのかも判断に困っているし、極彩色の星に至っては、自然環境が敵だ。


 土地そのものが膨大な生命力を持っているらしく、木がものすごい勢いで成長してサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを絞め殺すのは序の口、島が動いたと思ったら巨大な亀だった、空を飛んでいる飛竜が砂漠の砂から飛び出したサメに食われて砂海に沈んでいく、など魔境中の魔境なのだ。

 霧星の魔境よりもひどい。


 それに宇宙エレベーターの周囲に異常なほど磁界を蓄えた昆布は生えまくっていて、電子機器の塊のようなものであるサメ機巧天使シャークマシンエンジェルと相性が悪い。

 調査拠点を建てるのもままならない。


 クソデカいマグロのような生き物が突っ込んできて、なすすべなく昆布に絡まって死んでいったぐらいヤバい代物である。

 この昆布のおかげで危険なモンスターが宇宙エレベーターに近づかないようではあるが。


 さて。

 ガチャでも回すか。


 R・無敵病院


 出現したのは、病院だった。

 それも、倒壊してすでに廃墟になっているものである。

 なにか巨大なものがぶつかって病棟がえぐれたような形。

 それに窓ガラスは例外なく割れていて、吹きさらしになってしまっている。


 なにが無敵病院だ。

 入り口の看板に堂々と掲げられているそのバカバカしい名称に悪態をつく。

 思いっきり崩壊してるじゃないか……そう思いながら、入り口の自動ドアに近づく。

 すると、割れてしまっている自動ドアは私に反応したのか、自動で開いたのだ。


 ……電力が生きている。

 しかも、見えている受付の見た目が思いっきりSFだ。

 ホログラフィックなモニターが複数枚表示され、館内の情報を管理しているように見える。


 しかも、入り口脇にある自販機で薬を売っている。

 ナノマシン軟膏とか……回復ドリンクとか……あと「腕がもげても大丈夫! 再生カプセル」とか……。

 いや最後。

 それは自販機で販売していいレベルの薬とは到底思えない。


 これは、中に踏み入るのだいぶ危険なやつでは。

 薬品で汚染されている場合、足を踏み入れるだけで危険なことも多い。

 放置されていた医療用の放射線源が大事故を起こした話も聞くしな。


 よーし、兄をパシるか!






 後日。サメ機巧天使シャークマシンエンジェルの調査隊が無敵病院に踏み込んだ。

 内部には掃除用のドローンがまだ生きているらしく、床に埃が積もっているようなことはなかった。

 ただ、手術室のような部屋は無数の機械のアームが生えていてそれによって手術を行うような構造だったし、病室の一部はカプセルのようなものが並んでいる。

 それに殆どの機械は生きているようで、電力が不足して動かなくなっているだけのようだ。


 そして、無敵病院の最奥で見つけたのは。

 巨大な装置がなにかの錠剤を生成し続けている部屋だった。

 この部屋に無敵病院の発電力がすべて回され、使用されている。


 そこに残されていた資料を読むに、生成されている薬の薬効は「完全な健康」と「蘇生」。


 蘇生。

 完全な健康。


 そんなメチャクチャな……。

 たしかにそんなものが作れるならば、病院としては異端もいいところだろう。

 まさに無敵だ。


 まあ、問題はこれ人間用じゃないっぽいんだよな!

 どこを調べても、カルテに載ってる患者の姿が人間じゃねえ!


 3本足で、丸い胴体から一本腕が伸びてる生命体ってなんだよ!

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