R 罠

 罠。それは狩猟で獲物を捕らえるために使われたり、敵に拠点を侵入されたくない時に仕掛ける、危険な仕掛けだ。

 簡単なところでいうと、地面に穴を掘って相手を誘導する落とし穴、引っ掛けた足を吊り上げる括り縄、誘い込んだ相手を捕らえる捕獲器、触れた相手に電流を流す電気柵などがある。


 当然素人が遊び半分で仕掛けていいものではないし、あるのを見つけたら近づいてはいけないものだ。

 大体の場合怪我では済まない。


 今回はその罠が出た話だ。本来設置物であるはずのものが普通にガチャから出てくるの何なんだろうね。





 私の正面に座る兄が貪り食っているのは「N・海苔の佃煮」だ。

 これはガチャから出てきた見た目は普通の海苔の佃煮なのだが、なんと容器の中で増える。

 タッパー容器に入った形で出てきたからいいものの、ものすごい勢いで増えているので開けっ放しだと辺りが海苔の佃煮で埋め尽くされかねない。

 その見た目も相まって海苔まみれグレイ・グーまっしぐらと言える。

 なお、味の方は普通だ。

 お茶請けにはいいが私の趣味ではない。


 テラスに来たのは回したガチャを開封するためだが、兄の前で開けていいものか。

 ろくなことになりそうにないが。

 まあよかろう。


 R・罠


 開封と同時に、テーブルの下に大きな箱が出現した。

 家電なんかを入れているディスプレイ用のダンボールに似ているが、よくわからない材質。

 サイズ感も家電なんかが入ってそうな感じだ。

 表面には「君にもできる! 罠作成キット!」の文字。


 うわあ。すでに面倒事になりそうな予感がすごい。

 だってこれ、あれじゃん。

 兄が仕掛けた罠に最終的に私が引っかかるやつじゃん。


 とにもかくにもテーブルの下から引きずり出す。

 おっも。何が入っているんだ。


 開封してみると、たくさんのプラモデルランナーのようなものと、宝石のようなものがいくつか。

 それと説明書だ。

 なになに……?


 パーツを組み合わせることで罠が完成! お手軽に恨みを晴らそう!


 ろくでもない。

 いや、本当にろくでもないな。

 なにをさせるつもりだ。


 説明書の続きを読むと、どうもプラモランナーからパーツを切り出し、組み立てることで罠が完成するという。

 宝石のようなパーツはその罠のコアで、これがないと罠にならないとのこと。


 うーしいっちょ組み立てるか。


 試しておかないと、兄が今にも触り始めようとしているからな。

 ヤバいことになりかねない。


 ぱぱっと組み立てられそうなやつを選ぼう。



 20分後。パーツは手でちぎれるやつタッチゲートだったので簡単に外して組み立てることが出来た。

 出来上がったものはプラパーツで作られた魔法陣といった見かけ。

 可動などは無く、一塊になっている。

 これはプラモデルにする必要はあったのか……?


 そっと、実験室の地面に設置する。

 そして、それに対して適当なコインを投げつけることで起動を試みる。


 すると罠が仕掛けられている地点を中心に、地面が内側に開いた。

 覗き込むと虚空が広がっており、どこまでも落ちていきそうだ。


 組み立てたのは落とし穴。

 そこに穴がないのは確認済みだ。

 すなわち、突然穴が空いたことになる。


 うーんまじかぁ。

 これは兄を言い含めておかないと危険だ。


 私は付属のリムーバーで罠を除去しながら、兄に危険な使い方をするなと警告する羽目になった。

 面倒である。




 後日。実験室内に、立派な城が出現していた。

 は? なんでそうなった。

 R・罠の組み合わせをいじくり回して実験していた時に見つけたらしい。

 こいつ……人を罠に引っ掛けなければセーフだと思ってやがるな?

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