第91話 5柱の女王ナガルディア
現実世界から異世界に戻ってきた僕は、すぐに行動に移った。
僕達はあらかじめ決めておいた戦闘スタイルを取りつつ、現在こちらに向かってきている兵士達を見据えていた。
現在僕の後ろには今ままで自由行動であったドルゴンがいた。
ドルゴンは成熟期になっているので、子供を作る為に群れを探しに行っていたようだ。
その時エメラルドグリーンのドラゴンは10体のドラゴンの仲間を呼び寄せていた。
すべてのドラゴンが人語を理解すると事に僕は驚きを隠せず。
「ヒロスケ敵が見えてきたぞ」
ドルゴンの囁きに、僕はごくりと生唾を飲み込んだ。
場所は村を守る要塞のような城壁の真上からであった。
鬱蒼と茂る森の中に、ぽつらぽつらと沢山の兵士が見えてくる。
森から平原になると、まるで戦闘ポジションを決めるかのように、列をなした。
その数は1万の歩兵、ほとんどが徴兵にされた兵士かと思ったら、そういう訳ではなさそうで、国に忠誠を誓っていると瞳を見れば理解できる。
なぜならその表情は自己慢心に溢れていたからだ。
しかし少数の徴兵された普通の人々は体つきが弱弱しいので、すぐに見つける事が出来る。
次に2千の騎兵は、馬に跨っていた。よく育てられているよい名馬ばかりではなく、
よぼよぼの馬すらも見えるくらいだ。
この戦争で処分しようとするのが目的みたいな存在の馬達も見分けられる程。
僕の眼力は鍛えられていた。
その後ろには5千の弓兵がいた。
どれも逞しい筋力を備えている。
どうやら弓兵には徴兵達を使用していないみたいだ。
きっと徴兵された人々は使い捨てのようにしか使われないのだろう。
ひどい扱いを村人や街人達にするディン国王に苛立ちを覚え始めていたのはきっと僕だけではない気がする。
1人の化け物のような女性が前に進み出た。
村は要塞化されているので、そのてっぺんから見下す感じになる。
「我は蛇魔族の女王ナガルティアと申すもの、降伏せよ、そして未知の技術をこちらに明け渡せ」
「嫌だと言ったら?」
にかりと満開の笑みを浮かべながら、相手の出方を窺いつつも。
「なら皆殺しだ」
その時だった空を覆う黒い世界、
まるで巨大な何かが空を飛翔しているようだった。
その空に浮かび上がる大群を指揮していそうな化け物、それは3つ首のグリフォンで、その後ろからは無数のグリフォン達が飛翔している。
「あらまぁ、援軍はまだ早い事ですよ5柱のグリリールよ」
「知るかヴぉけ、こちとら戦争してーんだよ、5柱のナガルティア」
そう言う事から、彼らがディン王国の遺跡または鉱山から取れる魔力カフートが目的でディン王国を牛耳っている魔族達なのだろう、南の果てにはそういう化け物達が無数にいるのだと。
この時の僕は恐怖を覚えた。
しかし僕の後ろには。
仲間達がいる。
エルフがいて、ドワーフがいて、多種多様種族達がおり、村人たちがいる。
みんな交易を一時停止して、こちらにやって着ている手はずだ。
ウィルソンのチートの力はとても借りたいと、この時の僕は思っていたし、津波のごとく押し寄せる敵の大群たちに僕の腰は引けそうになる。
だけど隣にはネンネが無言で立っていてくれる。
隣には交易の達人であるテクスチャが黙って立っている。
エルフのドスンバンとドワーフのトンボ団長はここにはいない、彼等には任務を与えているのだから。
テクスチャはネンネと僕を守る為に残ってくれた。
沢山の自動弓矢を設置してある。
これは錬金術師のシシビルドとマービルドが考えだしてくれたものだ。
まぁそれにはきっかけがあって、現実世界から持ってきた教科書を彼等は見ていたそうだ。
すると沢山のインスピレーションが巻き起こり、算数とか色々な技術を掛け合わせる事により、この【自動弓矢】が完成したというわけだ。
至る所に設置され、1人で300本は放つ事が出来る。
予め設置して置く事も出来、遥か昔外国で使われた技術だ。
外国の戦争の場所で使われた戦争の道具を、僕達は今使用している。
空を蠢く3つ首のグリフォンは村に向かって落下してくる。
それは落下ではなく侵略だ。
ほぼ戦争が始まるきっかけなどなかった。
とりあえず敵がいたから殺し合おう、そういう気持ちで成り立ってしまう程だ。
四方の櫓と城壁より数千本の矢が飛来する。
5柱のグリリールは絶叫を跳ね上げさせ、村の中に落下する事を止めて、空へと逃げていく、
空には無数のグリフォンがいる。
数を数える事が出来ないのは、雄大な空の為、たまにグリフォン同士が重なりあって、こちらの数数えを防止するのだ。
「ここは任せて」
村の要塞の広場にはドラゴンの若きリーダーであるドルゴンがいた。
ドルゴンの周りには10体のドラゴンがいた。
それぞれカラフルな色をしていながら、
それぞれの個性を醸し出しつつ。
優雅に空を飛翔する。
「グリリールは頼んだぞ」
「任せて」
ドルゴンは頼もしく答えてくれたのだ。
空を支配するドラゴン10体とグリフォンが戦闘をおっぱじめている。
空の戦いはどのように戦うのか興味があった。
空を覆うドラゴンのファイアーブレスはグリフォンの1体の翼を焼き飛ばしていた。
ドルゴンとグリリールがぶつかりあって、もがきながら、空を飛翔し、雲に突撃していく。
雲はまるで芸術のように四散する。
空はドルゴンを信用するしかないと思った。
僕は視線を地面に向ける。
蛇魔族のナガルティアはこちらを指さし、一直線に向かってくる。
1万の兵士達が鬨の声を上げながら、武器をかざし向かってくる。
目の前には頑丈な城壁しかないというのに、プラントモンスターとスライムの加工物で作った最強の砦なのに、彼等は梯子を掴んでやってくる。
しかし梯子で登れる高さではない。
さらに高い梯子が必要であろう、それでも彼らは向かってくる。
まるで囮のように。
草むらを何かが這い進んでいる。
「ヒロスケ殿、草むらの中に何かがいます。城壁から離れてください」
「あれは」
その時、ものすごい地響きが起きた。
僕はドワーフ達がやってくれたと思った。
彼らの勇士を見るためにと、城壁に顔を出した。
1万の兵士達はまだそのトラップには到達していなかった。
なのになぜ落とし穴が起動したのか。
それは草むらの中を這いつくばっていたモンスターなのだ。
それは蛇魔族のナガルディアの部下たちだった。
そこにいただけで200体くらいだろう、
ほとんどが落とし穴に落ちる。
しかしそこから這い上がってくる。
まるで城壁そのものを関係ないとして這い上って来る。
その驚異的な力に、僕は唖然とし。
「どいてなヒロスケ殿」
そこにやってきたのはウィルソンとディボンドだった。
「ここは任せろ、ヒロスケは通路の要塞の方に行ってくれ、何かただ事じゃないことが起きてる」
「すまない、ウィルソン、ディボンド」
「気にすんな、あんたには助けられてばかりだからなぁ」
チートのウィルソンと屈強なディボンドが蛇魔族たち戦う。
その先には絶望は存在していなかった。
最後に城壁の外を見たとき、落とし穴のところに梯子をかけてわたっている1万の兵士たちが見えた。
次に兵士たちは肩車をしてまるでサーカス団の団員かと思われるような事をしていた。
僕はこれはまずいと思ったのだが、ウィルソンという少年とディボンドというおっさんは、すごいナイスなコンビで、まるで戦闘シーンが沢山ある動画を見せられているようだった。
僕は走り出した。
交易要塞の道へと。
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