第92話 5柱の巨兵マックスボンチョ
交易要塞へとたどり着いた時、僕はわが目を疑った。
そこにはドラロボが10体起動して、20体くらいの巨大な生物と戦っていた。
大きさだけでも交易要塞を壊せるくらいのパワーを秘めているのだろう。
ドラロボの少年ドワーフの乗り手達は必至に戦っている。
10体VS20体なのだから、不思議な事にトンボ団長の姿はなかった。
ドラロボ達にはそれぞれの種類がある。
近接武装タイプのクラッシャー
遠距離攻撃タイプのキューチャリー
魔法タイプのマジシャン
そして将軍タイプのジェネル
ここではジェネルが1体
クラッシャーが5体
キューチャリーが3体
マジシャンが2体という編成だ。
マジシャン型のドラロボにはヒカリーとダーカーという双子が乗っている。
2人はあらゆる技術と魔法で両親を蘇らせようとして失敗している。
2人にとってきっとトンボ団長は父親も同然だろう。
その2人はドワーフなのに魔法を使う事が出来る。
マジシャン型のドラロボでは、魔力を大幅に増大してくれる効果がある。
クラッシャー型が1体吹き飛ばされると、そこに別のクラッシャー型が加わり仲間の抜け道を補う、地面は瓦礫を崩しながら、沢山の岩が崩れながら。
草むらは巨大なドラロボと巨人に荒らされる。
小さな川は潰されて無くなっていく、とその時だった。
巨大な何かがこちらに飛来してくる。
交易要塞通路の端っこにそれは着地した。
すごいバランス感覚だと思ったら、そいつはジェネル型であり、つまりトンボ団長である事がすぐに分かった。
トンボ団長はこちらをちらりと見ると。
「ヒロスケ殿、ここは下がってくだされ、奴は只者ではない」
「そうはいかないさ」
僕はにやりと笑うと。
隣にはネンネが必至で僕が戦いに行かないように右手を掴んでいる。
それをテクスチャが放すようにと説得している。
「絶対に死なないでください、死ねばあの世まで追いかけていきますから」
「死ぬつもりはないさ、テクスチャ、ネンネをよろしく頼む」
「任せてくれ」
僕はグリーンヒーローに変身していた。
全身がグリーンスーツみたいなものに覆われて右手にはオリハルコンの剣を左手には伸び縮みする事が出来るダイヤモンドの剣を。
背中には飛翔マントを装備している。
そこには紛れもなくヒーローがいたのだから。
僕は走り出す。100キロで走る事が出来る。
そのスピードはハイスピードではない車なら追い抜けるスピード。
地面を踏みしめる。
次の瞬間、走り幅跳びのように飛翔した。
飛翔マントが跳躍力を補佐してくれる。
風が顔面に激突してくるような風圧を感じ、トンボ団長のドラロボ、将軍型ジェネルの肩に着地する。
「まったくヒロスケ殿にはいつも驚かされます」
「気にするな、お互い助け合いが大事だ」
「それもそうですね、まずは奴の情報からですが」
「おいらのこたぁ、おいらのことで説明すっだ」
すごく声の低い音が響いた。
まるで山そのものが話しかけているようだった。
目の前には荒野そのものしかない、だがそれがどんどんと大きくなっていき、荒野そのものだと思っていたものは巨大なおでこだった。
おでこは地面から出てきたわけではなかった。
それは遥か前方、つまり山の瓦礫地帯からやってきたのだ。
なによりおでこしか見えなかったのは、やつが赤ちゃんのようにハイハイでやってきたからだ。
そいつはゆっくりと二足歩行になろうとした。
ドラロボなど犬のようにしか見えない巨人が表れる。
そいつはこちらを見て、にやりと微笑む。
「無理だろあれ」
僕の当たり前のツッコミに。
「ヒロスケ殿がそれでどうする、あいつは滅びた巨人の一族だ」
「だから、それはおいらが言うだ」
また恐ろしい低い声が響き渡った。
その度にその巨大巨人の配下である巨人でさえサル程度の大きさしかないのだから、それでも結構でかいのだが。
「おいらは5柱の巨兵マックスボンチョ様だぁ、覚えておけよ、そして巨魔族の生き残りでいいいい、今日からここはおいらの墓場だでいいいいい」
「話す度に頭に響く声だ」
「ドラロボの中だとそうでもないのだがなぁ」
「とにかくドワーフ兵は巨人達の足止め、そして僕とトンボ団長であいつをぶっ倒すぞ」
「そう言ってくれると思っていた」
「という事で先手必勝」
グリーンヒーローはトンボ団長のドラロボからジャンプすると、飛翔マントの効果を利用しスピードの威力も上げる為に、トンボ団長のドラロボには悪いが思いっきりジャンプさせてもらった。
マックスボンチョに着地したとき、そいつの頭の上に着地していた。
右手と左手を振り上げる。
ダイヤモンドの剣は最大まで伸ばし、
オリハルコンの剣は鋭さを増しているので、普通に両断する事に。
【魔人流断罪剣】を発動させる。
それを振り落として、それは何者かによりガードされる。
そいつは突如現れた。
破裂音と炸裂音を響かせながら両手に握られた剣が重いっきり弾かれる。
ぐらんと右手と左手に圧力がかかり、僕自体が吹き飛ばされる。
遥か空を飛翔しながら、マントでコントロールしながら。
風という風圧を感じ、ほっぺたと体をなぶられながら、空を飛空している。
そして空気を蹴り上げるのだが、
空気は蹴る事ができない。
このままでは墜落して踏みつぶされる。
ダイヤモンドの剣を伸ばし、
マックスボンチョの右肩に着地する。
そこからまた両方の剣を構えて、解き放ち、振り下ろす。
【魔人流断罪剣】を発動させるも、また何かによってはじかれる。
そいつがどこにいるか目星をつけると。
また。
【魔人流断罪剣】を発動させる。
「まったくしつこい人間ですねぇえ」
「てめーもな」
そこにはドラロボがいた。
なんとトンボ団長が先を見越し、
「え」
そいつを思いっきりロケットパンチでぶち飛ばした。
その時に僕のダイヤモンドの剣を掴まれ、一緒に吹き飛ばされる。
トンボ団長が戻ってきたロケットパンチを。そのままマックスボンチョと組手をするほどに。
攻防戦が続いている。
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