第83話 作物の種
「それがしはドスンバンと申します。この度は冒険に出てみたくなり、色々な土地を見物してきました。ディン王国内が一番ひどい場所でした。徴兵された男性たち、女性たちは食べ物にこまり、食料は奪われていく、奴隷になる子供や女性もいる。地獄そのもの、だけどこの村だけは違います。ディン王国内におきながら、反抗的です」
「そこまで分析していたのですね」
「そうです。それがしを舐めないでください、それがしの情報魔法は意外とすごい物なのです」
「1つ非常に頼みづらい事があるんです」
「いかようにでも」
「この村に学校を作りたいのです」
「ふむ、学校ですね、学園、または学び舎、または学習所とも言いますが」
「そうです。ですがトンボ団長は学校となると話は別で建設出来ないとのことで」
「そうでしょうドワーフのような武骨なものには地下掘りが似合っています」
「はは、そうですよね」
「で、それがしに作れと」
「はい、お願いします。報酬も渡します」
「報酬はいりません」
「では何で返せば」
「あなたの配下にしていただければそれだけでよろしいかと」
僕は唖然と言葉を失った。
どういう流れでこうなってしまうのだろうか?
最近僕って人望でもあるのか?
とか色々と考えてしまうわけだが。
「いえ、あなたに興味が出たのです。この村の人々は異世界からやってきては異世界に帰り、また異世界にやってきては色々な物資を届けてくれる。それはまさに勇者ではないですか」
「そうなのかなぁ」
「そのような人に仕えてみたいと思うのが普通でしょう」
「そう言ってくれるととても嬉しいよ」
「なので微力ながら力をお貸ししたいのです」
「では本題に入りましょう、学校の件です」
「いいでしょう、というかここでですか?」
「実はネッティーとラングンにも用事がありまして」
「それならお先にしてください、それがしは少し待っております」
「すみません」
返事を返し、目の前のネッティーとラングンに目標を切り替えた。
「まずは2人にこれを見てもらいたい」
「おう」
「それは興味深いですねぇ」
ミニチュアボックスの中から取り出したのは、作物の種500個とR18肥料ボトル型栄養剤100個であった。
「この液体はなんなのです?」
「それは尖がっている部分を地面に刺すことにより、そこから液体がスローで流れ出る仕組みです。しばらくすると畑中に回り、とても健康な土になります」
「なるほどなぁ」
ラングンが感心していると。
「それにしても見た事のない種たちだな、袋の絵が作物か?」
「そうです」
「この前渡された作物と同じ種類のようですし、知らない種類もありますねぇ」
「そうですネッティーさん、どれも採れる季節がばらばらですが、この畑なら問題ないと思いました」
「そうですねぇ、この畑は普通ではありませんから、色々な肥料とかが混ざり合う事で、みんなが想像するような畑ではない、1日や2日で作物が実ってしまうような、化け物級の畑だし、大きさは半端じゃないし、はぁ、疲れてしまいましたねぇ」
ネッティーさんがしょんぼりとしているが胸を張ってこちらを見た。
あまり胸を張られると視線に困る。
ネッティーさんは一応淑女なのだから。
「ですが頑張りましょう、畑はまだまだあまり余っております。どうにかして開拓していかねばなりますまい、桑や鎌では意外と大変ですが、みなさんのよき力となるでしょうし、これ以上畑を増やしてどうすんだって話でしょうけど、きっと必要になるのでしょう?」
こくりと頷き。
「その通りです。食べ物は多くあれば多い分だけいいのです」
「そうですよねぇ、ではラングン、この種はあちらに植えてきてください」
「そ、そんなぁ、俺は種植えで自分だけ液体を入れてみたいだけだろうが」
「あれ? いいのですか? あなたはうちの配下みたいなものでしょう?」
「す、すみませんでしたあああ」
ラングンが必至こいて逃げていくと、ネッティーは苦笑をもらしている。
「ではこちらも色々と作物を育てるので、そちらはそちらで解決してくださいねぇ」
「助かったよネッティー」
「いかようにでも」
「ではドスンバンさん、行きましょうか」
「できればどこに建てるかを教えて頂きたい」
「こちらです」
ドスンバンさんを案内していく中で、辿り着いた場所、村の少し離れであった。
そこの丘からは村長宅の宿屋が見えるし、壁の中にも納まっているし、近くには山に逃げらえるような道が出来ている。
「なるほど」
ドスンバンさんはエルフの耳をきょろきょろと動かす。
それはとても器用な事だと思いつつも、彼は人差し指を舐めると、風向きを確かめていた。
「なるほど」
またドスンバンさんは1人で頷いている。
次に丘の土を少し掘り、地面に手を当てている。
次に丘ではない土を少し掘り、手で掴んでいたりする。
次は枝を地面に突き刺し、どういう向きで突き刺さるかを確かめている。
「なるほど、問題ありません、ここなら最良な学校が出来上がる事でしょう、3階建てでいいですね?」
「お願いします」
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