第82話 それぞれの役目分担
ゆっくりと歩きながら、ネンネはトンボ団長の隣に、僕はテクスチャの隣の椅子に座る。
材質は木材のようで、商品として購入したのではなく、この場で製作した事を伺わせる。
「まずはテクスチャさんに朗報がある。2000個のフィギュアが届いた」
するとテクスチャは大きな口を開けて、椅子を後ろに倒し、そのまま後ろ向きで頭を床に叩きつける。
それで立ち上がると、頭に星をぴこぴこさせながら、ここはアニメかよとは突っ込まず。
「嘘でしょ、それ2000個って貴族動きますよ」
「やっぱり?」
「何、惚けた顔しているのですか、これは一大事、そして貴族パニックになりますぞ」
「何か利用できないか、リンゴーンがこの村の事を告げて、ディン王国は攻めてくるだろう、だがここはディン王国よりかなり離れているし、リンゴーンとてディン王国に到達するまでに時間がかかる。それを踏まえて」
「ふむ、少し考えますか、後自分は交易商人を辞めたのだし、妻と息子と娘と離れるつもりはありません」
「安心しろ、熱くなる必要はない」
テクスチャは真っ赤になりながらも2000個のフィギュアは嬉しい事だが、しかし交易商人として自分自ら行くディン王国に行くつもりはないと断言する。
それは予想がついていたし、彼には妻と息子と娘がいる。もし何かがあったらシャレにならないし、僕自身が僕を許す事ができなくなると思う。
だから、僕はにやりとほくそ笑んで見せた。
「貴族パニックを引き起こしてやるぜ」
「一体何を企んでいるのですか?」
テクスチャに尋ねられると、僕は冷静な表情に切り替える。
「まずこのフィギュア達をこの村にやってきた普通の商人に売り飛ばす」
「ですが普通の商人はこのフィギュアの良さをしりませんし、このガチャガチャの良さもしりません」
ここに来る時にフィギュアと一緒に数個のガチャガチャを持ってきていた。
普通の商人からしたら銅貨1枚を入れるだけで、人形が入ったカプセルが出てくるなんてどうもでいいものだと思うだろう。
しかし貴族達はそうじゃない、貴族達はこのガチャガチャがたまらないのだ。
「今回のガチャガチャはお金を稼ぐ為ではない、ディン王個を貴族パニックさせるつもりだからだ」
「なるほど」
「1日置きにこの村にやってきた商人たちにフィギュアを売り飛ばす。そして彼等はディン王国に持っていき、そのあとはどうなると思う?」
「つまり最初の人は悪ふざけて売って見るかと思ったら貴族が表れる。そして高値で売れるようになると、次にやってきた商人がさらに高くなる。その次もさらに高くなる」
「恐ろしいです貴族パニックは」
テクスチャさんは身震いしていた。
「だが僕たちには利益はない、あるとしたら、もっともっと時間を引き延ばして、戦争を遅らせる事だ。なぜなら要塞を完成させる事が僕達の切り札なのだから」
「なんだか安心しました。これで自分はあなたの護衛に心を使う事が出来ます」
「信頼しているよテクスチャ、1つだけ仕事をうけもってもらいたい」
「なんでしょうか?」
「この村にいる商人が何人いるのか、そしてディン王国に帰っていくのかを調べてほしい」
「それなら任せてください、トンボ団長、少し早いが失礼する」
「うむ、気にするな、どうせわしにも話があるんじゃろうからな」
トンボ団長の方に僕とネンネが視線を向けると。
「まずは色々とご苦労様です」
「いいんじゃぞ、わしはお主の配下じゃからなぁ」
「学校を作ろうと思っているのですが、トンボ団長は建物を作る事ができますか?」
「うむ、無理じゃと言っておこう」
「やはり」
「そうじゃ、わしは鉱物や重たいものを扱うのが得意でな、緻密な計算の入った建物は苦手なのじゃ、出来るとしたら鉱石の学校になるがな」
「誰か建物を作る大工走りませんか?」
「おぬし達の中に普通の大工がいるであろう、それでこの宿屋も作ったのだろう?」
「今回はマジで頑丈な学校を作る必要があるのです。この村が大きくなって、国になったとしても、その学校が使える必要があるのです」
「なるほどのう、では1人に心あたりがある、そいつはこの村に観光に来ている。彼の名前はドスンバンだ。とてつもなく頑固のエルフだよ」
「エルフですか」
「ああ、髪の毛はシルバーで別にアルビノという訳ではない」
「どこに」
「畑じゃよ、先程畑に向かっていた」
「あ、そういえばエルフの爺さんが観光でこの宿に泊まってました」
驚くべき事をネンネが発言すると、僕は逃げられないうちに外に飛び出た。
後ろではネンネが叫ぶ。
「夜ご飯、食べに来てください、待ってますから」
そう言ってネンネは後ろへと消えていく、僕が向かった畑は昔では信じられないくらい広くなっていた。
そして作物の異常な成長ぶりに、驚愕の視線を向けてしまった。
そこに農作業のリーダー的存在のラングンが腕を組んで辺りを見渡している。
その右横にはラングンの組長的存のネッティーがこちらも腕を組んで辺りを見渡す。
その隣には1人の銀髪の耳の長いエルフが畑を見渡している。
思いっきり走ったので、ぜいぜいと空気を吸い上げながら、3人の元へと近づくのだが。
「ここはすごい自然がいい、こんなありえない作物を見た事は無かったし、味も格別だ。ネッティー殿はすごい支配力なのですね」
「それは違います。このような作物を作るきっかけを作って頂いた方がいます。その方はヒロスケ殿という方です」
「一度はヒロスケ殿と会ってみたいものです」
「きっと近くにいますぜ」
ラングンがそういうと。
僕は3人の後ろに到達していた。
「僕がヒロスケですが」
ネッティーとラングンと1人の老エルフは後ろをばっと振り返り、
僕がぜいぜいと息を荒げながらも3人に向かい合っているところを見て。
その場の全員がよく分からないけど笑い出したのであった。
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