第66話 円卓会議

 ドラロボが地下街を作ろうとしているのを僕とネンネはトンボ団長の案内の元で見学した。その時、僕の脳裏では札幌にある地下街をイメージしていた。


 だがもっと巨大な物にしたいし、下手したら地下ドームなんてのも考えるが、どのような形にするかはドワーフ達が操るドラロボの力次第と言う訳だ。


 巨躯のドラロボですら歩ける巨大な螺旋階段は、まるで渦を巻いて蟻地獄に吸い込まれるように入っていく事を想像してしまうほど。


 滑らかであった。


 地下街の設計図はトンボ団長に預ける事にした。

 それでもトンボ団長は暗記しているからと、頑なに拒んでいたが、きっとドワーフの1人の老人としてのプライドがあったのだろう。


 僕とネンネはこれからどうするかを相談した。

 主要メンバーとかリーダー的存在の数名を集める事になり宿屋で会議は開かれる事になる。


 実は宿屋には地下室がある。

 ネンネが建築家の村人達に作らせたものだ。


 この村には建築家がいるのかいないのかは分からない、

 それでもプラントモンスターの死骸とスライムの素で作ってしまうのがこの村人達なのだから、凄い事だと思う。


 現在、僕とネンネは隣同士に座りながら、辺りを見渡す。

 ここにいるメンバーはというと。


 宿屋で村長のネンネ、現在僕の護衛のテクスチャ(元交易商人)、ウィルソンという悪ガキ少年、ディボンドというダウン症から脱することに成功する、ネッティーは農家の姉御的な存在、ラングンは農作業のリーダー敵存在でネッティーが上司、ジービズはプライドの高い鍛冶屋、ビニは孫がおり、1人の保護者としてより村を作ろうと頑張っている。デニは10歳で両親が餓死している。ビニが祖母でだ。リンゴーンは偏屈爺さんであり、長い事村にいるので呼ばれた。



 僕以外の10名のメンバーが集まった。

 地下室には円卓会議で使われていそうな机がある。それはとても大きな机だった。

 円卓の机には赤いペンキのような物で塗りたくられているのか、ぴかぴかと赤くなっている。


 触ってみても汚れ1つもない、


「みんなが来ると思って掃除しておりました」


 と言うのがネンネの決まったセリフだった。


 椅子は全部で15個あったのだが、

 一応空席という事で、僕たち11人は会議を開くことになる。



「では作戦会議を始めようと思う」


 全員が頷くと。


「まず現状確認からと行きましょう、この村には現在3つの交易国があります。1つがドワーフ族のエクスバン国家ですあそこの巨大な亀のタートルゴーレムには驚かされました。次はエルフ族のセルフィール国家の森の雄大さには感動しましたが、最後にバラドリ混在王国の多種多様な種族には驚かされました。この3つが現在の交易国となります」


 その時ジービズが腕を組んで、ゆっくりと腕を解放すると、右手を挙げた。

 彼はこちらを見て真剣だ。


「ドワーフ族の鍛冶屋とエルフ族の鍛冶屋、そして、わしの技術を融合したら、相当な物が造れると思うのじゃが」

「それは考えてもみなかった事です。あとバラドリ混在国家の技術も合わせると凄いのではないですか?」

「うむ、それもいいかもしれない、バラドリ混在王国の技術を見た事もなかった。あそこは2本の柱の真ん中を通らないと通れないという逸話があるが、本当なのか?」


「そうですよ、巨大な2本の柱があり、そこを通る必要があるのです。意外とジービズさんは冒険がしたいのですね」

「あったりまえよおお、だけど今は年齢が食っちまって無理じゃがな」

「そう言わず頑張る価値はあります」

「そうかのう、わしからは以上だ」


 次に手を挙げた人を見た。それは同時に2人だったウィルソンとラングンだった。

 あの喧嘩馬鹿ダブルがまるで呼吸を合わせたかのように手をあげたのだ。


「「闘技場を作ってくれ」」


「君達はその意気投合ぶりがすごいなぁ」

「そうさ、ラングンとはこれで仲直りした」

「ウィルソンがまさか闘技場で暴れたいと思っていたとはなぁ、俺は感激した」


 どうやらウィルソンとラングンが同じ事を思っていたことで、仲直りしたのだろう。


 まぁ、すぐに喧嘩するのが関の山だと思うけど。


「闘技場ですね、それも検討してみます」


「「ありがたく」」


「そこまでハモルなや」


 僕は思わず突っ込んでいたら、

 隣ではネンネが涙を流しながら爆笑している。

 どこに笑うツボがるのかと僕は謎に思いつつも。

  

 次の話を聞く事とした、ゆっくりと左手をあげるのは、ネッティー姉御だった。


 ネッティーはとてもリーダー気質の女性であり、100人くらいの村人達でもうまく統率している。ほとんどが農作業になる農夫達だ。中には女性の人もいるが、基本的に男性が畑仕事する事が多いようだ。


 文明が発達していない世界では、男達が地下仕事をして、女達は細かい仕事をするものだと、この世界では成り立っているようだ。


 確かに江戸時代の日本では、男が戦う専門または重労働をして、女は細工や、料理など細かい事をしている。


 日本も異世界も似ているような感覚なのだろう。


 そして今の日本はそういう習慣がなくなりつつある。女性が仕事をして、男性がご飯を作る事なんて当たり前だし、女性が格闘技をやるのだって当たり前。


 世の中は少しの隔たりはあれど男性女性平等になっているのだろう。


 だからネッティーが姉御としてヤクザみたなリーダーになろうと応援し続けるのだ。


「これはヒロスケ殿にお聞きしたい事、洗濯機、乾燥機、電子レンジ、冷蔵庫が必要になってきています。この村はどんどんと大きくなりつつあり、洗濯機と乾燥機と電子レンジを待つ人が長い列を作っているのです。冷蔵庫もない家庭があるほどなのです。そこで電子機器の増加をお願いしたいのです」


「うん、わかった。それも考えてみるよ」


「ありがとうございます」


 僕は首をこきこき言わせながら冷静になって考える。

 今必要な事、そして今出来る事。


 それが何なのかについて。

 この会議はそれを明らかに出来るのだから。


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