第65話 地下の街を建造中

 トンボ団長はごほんと咳払いすると。


「あれは魔法タイプ【マジシャン】と呼ばれるのじゃ、あそこにいるので全員で2体だけじゃ、あれには双子のドワーフ少年が乗っている。ヒカリーとダーカーという双子でな、そっくりなのはいいのだが、髪の毛の色が違う。ヒカリーは黄色くまるで光のようなもの、ダーカーは黒ではなく紫のようなもの、基本的にドワーフは魔法を毛嫌いしている」


「それはなぜなんですか?」

「まぁ聞いてやるな」


「はは、構いませんよ、それでなぜ魔法を毛嫌いしているドワーフがマジシャンに?」

「あの2人は父親と母親の蘇生を試みたのじゃ、魔法で」


 僕は唖然としていた。

 

「死者を生き返らせるのはドワーフ法で禁じられている。その蘇生で失敗した2人は心を欠落してしまった。ドワーフ王はそれを見かねて保護し、わしの団員にしたという訳だ、あやつらは恐らくまだ諦めていない、だってまだ10歳なのだから、これはドワーフの年齢では若いほうだ」


 トンボ団長は熱く語っている。

 まるでヒカリーとダーカーを子供のように思っているようだ。

 それでトンボ団長は首をふる。


「まぁそういう2人がいるという事を記憶に留めておいてくれぬか」

「それは、そうです、もしかしたらあの双子は、いえ、これはあまり言うものではないですね」



 あの双子には死者が見えているのでは?


 心の中で僕は思った。


 死者が見えており、父親と母親が近くにいる。

 

 だけど生身の両親の温もりを求めている。


 ヒカリーとダーカーはその光と闇の狭間で戦っているのだろう。


 僕は気合を入れて。


「トンボ団長、僕はこの車を宿屋の近くに停めておきます」

「うむ、了解した」


「そのあと地下設備について見せてください」

「では先に行っておろう、場所は分かるな? 赤子でも分かるくらいだからなぁ」


「だって巨大な穴ですから、村の中にそのような物ができれば、嫌でも目に入ってしまいますよ」


「がははっはは、それもそうじゃのう」


 僕は武装車両の車に乗ると、発進させた。


 車はゆっくりと移動する。


 沢山の村人達が仰天した顔で近づいてくる。

 窓ガラスに僕が映っているのを見て、村人たちは会釈してくれている。


 宿屋兼村長宅になっている場所に僕は到着するのだが、もう村人が群れのように追いかけてくるものだから、宿屋の扉からなんだなんだ?


 という顔で扉が開かれた。

 

 そこには久しぶりのネンネがいた。

 ちなみに野次馬の中にウィルソンとラングンとネッティーがいた。

 ウィルソンは街の悪ガキで、いつも奇想天外な事を叫んだり。ラングンは農作業のリーダーであり、ネッティーは上司という形で、この村は成り立っている。


 

 沢山の農夫たちを束ねる番長みたいなラングン、そしてそれを牛耳るネッティー、それをあざ笑って爆笑するウィルソン。


「まったく本当できあがっている」


 戦闘車両の近くにいたテクスチャ商人が大きな声で叫ぶ。


「皆のもの恩人たるヒロスケ殿が困っている、散れい」


 まるで商人の発言力じゃないよとか、どこかの軍団長のような活に僕たちは驚きの声をもらしてしまった。


 周りからウィルソン、ラングン、ネッティーの3名がいなくなり、そのほかの村人たちもいなくなると気を利かしてくれたのか、テクスチャさんもいなくなっていた。


 僕とネンネだけになり。

 

「ただいま」

「おかえりなさい」


 僕とネンネはただ見つめ合っていた。

 ネンネと初めて会った時はとてもがりがりでありながら、今にも死んでしまいそうな、そんな雰囲気だった。


 今では髪の毛の艶も眩しく見えるほどよくなり、少しだけふっくらとしだしている。


 それでも僕からしたら全然痩せている。


 ネンネから見て僕の事がどう見えているのか?

 それが気になったけど、僕は右手を差し出した。


 ネンネは黙って右手を差し出すと。

 僕とネンネは手を握り合った。


 こんな当たり前な事、そんな事すら忘れていた気がしていた。

 女性と手が触れ合うなんて人生でこの女性が初めてだった。


 右手と右手の握手は、人生が再起動したような気がしたんだ。


「さて、こほん、色々とお疲れ様」

「こちらこそ、ネンネもお疲れ様、僕はこれから地下設備に行くんだ、君も来るかい?」


「うん、行くわ」



 僕とネンネは隣同士で歩きながら、ゆっくりとその時間を楽しむように雑談を交わしあった。


 2人が到着した所には、トンボ団長が大きな欠伸をしながら、こちらを見ていた。

 彼は堂々と鼻くそをほじると、それを口の中に放り込んでいる。


 ネンネはその光景が当たり前のように接するし僕も子供の頃に同級生が同じ事をしているのを見てきた。


「よお、これから歩く場所はドラロボが歩く場所だ。一応歩道にしてはいるが、踏みつぶされても文句を言うなよ、まぁ、踏みつぶされたらわしたちの希望が死ぬ事になるから、絶対しないけどな、がっはっは」


 ブラックジョークのつもりだろうけど、

 僕として冷や汗ものであった。


―――――――――――――

村→地下設備

―――――――――――――


 僕とネンネはトンボ団長のジョークを聞きながら、

 地下設備の最下層になる。


 ビルを逆にしたら20階建てくらいだろうか。


 地下に20階建てのビルの縦穴があり、それを螺旋階段になっている。

 巨大な螺旋階段はドラロボが通れるようにもなってるし、さらには沢山の人々が地下街予定地に住む事だって出来る。


 ただしちゃんとした設備にしないといけない。


「なぁヒロスケ殿、あんたの設計図だと、この地下の街は、やがては地下交易となるのだろう?」


「そこまで見てたのか」


「がっはっは、ドワーフをなめんでくれ」


 そう僕は地上に要塞を作り、その要塞は交易路を守ると見せかけて実は地下で交易しつつ、さらに戦争で有利になるように色々な抜け道をつくる。


 僕はにやにやしていると。


「あ、ヒロスケがいやらしい顔してる」


「がっはっは、ネンネ村長よ彼も男だ」


「そういう訳ではないよ、勘違いしないで」


 目の前に広がる光景、沢山の壁が掘られている。

 巨大なシャベルやツルハシをドラロボが使っている。

 それでもその広さはグラウンド20個分くらいはあって、

 もう今すぐにでも忽然と村人たちを地下設備に隠す事だってできる。

 下手したら村より地下街のほうがでかくなるだろう。


 夢が確信に変わる瞬間だった。

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