第45話 ボードゲームどころじゃないの分かってる?
僕はウルフ族のシェイグさんとヴァンパイア族のドンスコさんと魚人族のレイガスさんに、囲碁、将棋、リバーシの遊び方を伝授する事になった。
まるで僕の事を師匠とでも呼びたそうにしていたので、師匠と呼ばせようとしたら、
マカ姫に止められるというアクシデントが発生する。
「ヒロスケ殿、このボードゲーム達はどれも魅力的だ。これを譲ってもらえぬか?」
「もちろん譲りますよ、その代わり、同じ物を製作して沢山の人々に提供できますか?」
「もちろんだ。俺様達ウルフ族は約束を守る一族だ」
「それがし達も美女との約束は守るはずだ」
「魚人は魚にかけて」
それぞれがバラバラな返事だったが、
僕としてはそれを信用するに値すると思った。
「では交易はしてくれますか?」
「もちろんだ。そなたに交易品みたいな送り物を届けたい。3種族から1種類ずつ受け取ってくれぬか?」
「はい、ドワーフもエルフもくれましたので」
「それは真か、ならウルフ族代表として、少し待っておれ」
ウルフ族のシェイグさんはウルフ族の代表が入る専用の部屋で何かを探している模様。
しばらくすると部屋から出てくる。
彼の右手に握られていたのは白い骨のような笛だった。
「この笛を吹くと異空間より狼たちが表れる。狼たちの種類または大きさなどは持ち主の度量によって決まるとされている。これをウルフ族では【狼笛】と呼んでいる」
「ありがとうございます」
「そう簡単には折れる事は無いから安心しろ」
僕は狼笛を受け取ると、試しに吹こうとしたら。
「ちょちょいのまち、ここではやめろ」
「す、すみません」
ウルフ族のシェイグさんが下がると、次はヴァンパイア族のドンスコさんが出てくる。
赤いマント纏っているのに背筋が曲がっている初老のヴァンパイアは珍しかった。
とはいえヴァンパイアを見た事があるといってもリアルの映画とかで見た程度だ。
「それがしからの贈り物はこれじゃ」
どうやら部屋に戻る必要がないらしい。
「【ミニチュアボックス】じゃ、これは大きな物をこの箱に小さくして入れる事が出来る。例えば、巨大樹を両断して、このミニチュアボックスに吸い込む事が出来る。取り出す時も大きさを元に戻すことが出来る。というよりかは外に出すと自動で元に戻る仕組みじゅあ。これはヴァンパイア族の族長クラスしか持っていないとされているし、血の契約をすれば、落としても盗まれても持ち主のところに戻ってくる。現在それがしと血の契約をしている。なのでそれを解除した。次の契約者となるかはお主次第じゃ」
「ならする」
「それがし的にはよーくって、即決かい」
「そんな便利な物があれば、異世界から色々なものを持ってこれるぞ、ぐひひひ」
「なんだか怖い笑いごとね、次はあたしが代表とする魚人族からよ」
レイガスはクジラの魚人らしく、
背中から海塩を噴出しており、
それが地面に吸い取られていく。
どうやら防水設備も完備しているようなのだ。
「あたしの所からは【無限呼吸の指輪】よ、これは指に嵌めさえすれば、手でも足でもよくて、嵌めると湖の中でも無限に呼吸することが出来るのよ、あたし達には必要の無い物とされているけど、たまにあなたのような観光客を案内する時に必要なのよ、マカ姫、そしてメイル姫」
魚人族長の女性はごほんごほんと咳払いしながら、にこりとレイガスという名前に恥じないように2人の姫を見続けていた。
「そうですわね、あれは子供の頃、あなたから無限呼吸の指輪を借りました。そのあと返しましたが」
「それはわたくしもですわ、なんでこんなすごい指輪をくれないのだろうかと謎に思っていましたわ」
「基本的にこの指輪を送る事は信頼の証であり、貸す事は一時的な信頼という意味なのよ」
「なるほどなぁ、レイガスさん達も考えているんだね、魚人にとって【無限呼吸の指輪】の大量生産が危険なんだよ」
「それはどういう事だ?」
「つまりねマカ姫、沢山の無限呼吸の指輪があれば、沢山の人々が川や海の中に侵略する事が出来るという事よ、それは人間だけではなくて、エルフ族もドワーフ族も同じ事だと思うよ」
「そう言う事だったのか……」
「まったく気づけなかった。誰もが思い付きそうな事……」
「気にするな、それで3人の族長からのプレゼントは終わった事だし、本格的な交易品を決めようと思う」
「それでいいですよ、今回持ってきたのは見本のようなものです。ここが一番最後の目的地でしたので、ここからドワーフ、エルフの国に回ってまいります。その時に必要なものの交渉したいと思います」
「「「そういうことなら」」」
3人の族長が乗り出した。
それから交易品会議が始まった。
もちろん一番最初にこの3長老が集まる場所に、
テレポート設置型が設置された事は、言うまでもない。
僕は【狼笛】【ミニチュアボックス】【無限呼吸の笛】を大切に、少し大きめのリュックに仕舞う事とした。
交易会議には僕たちは参加する事は出来なかったのだが会議は延々と続いていた。
そこに後付けのように重要な人々が集まってくる。
その中には3種族以外の種族もやってきている。
3時間が経過すると、まるで開かずの扉であった会議室が開かれる。
そこに僕達は案内されると、僕とマカ姫とメイル姫が椅子に座る事となり、その隣にはドラゴンで青年期になったドルゴンが無言で鎮座していた。
「沢山の種族と討論しあった結果じゃが【歯磨きブラシ】【歯磨き粉】【5種類ジュース粉】【囲碁、将棋、リバーシ】の交易品を提出したいのじゃが、こちらからは【麗豚肉】【神秘葡萄酒】【人魚の涙】を提出する事を願う」
僕は頷くと。
「説明をお願いします」
「うむ、すまぬ、それがしとした事が説明を忘れておったわい、まずは麗豚だがヴァンパイアたちが命をかけて育てた豚じゃ、食べたらとろけるぞい、そして神秘の葡萄酒はウルフ族や色々な種族が造っているとされる。これは甘すぎる酒として有名じゃ、最後が人魚の涙じゃが、魚人の地下水には沢山の人魚がおり、彼女たちが流す涙を回収して、顔や手足に当てると、古傷や、不細工な顔、または不細工な体をすべて美形にしてくれるというものじゃ」
「なるほどありがとうございます。僕とバラドリ混在王国の交易は成立しました。ここからエルフ王国、ドワーフ王国、人間の村に道を作ってもよいですか?」
「もちろんです」
「まずは許可の下りているドワーフから繋げようと思います。道を作るには沢山の人手が必要です。よろしければあなた方の力を借りたいのです」
「俺様ウルフ族は力を貸そう」
「それがしヴァンパイア族も貸そう」
「あたしたち魚人族も貸しましょう」
「ありがとうございます」
「「「ところでお主自分が死にかけているのを忘れておらぬ!?」」」
そして僕はそう言えばと思い出すのであった。
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