第46話 魔力無き者が魔力を得るとは死ぬこと

「ヴァンパイア族秘伝の技でお主は一度死ぬ、そして蘇る。じゃが、本当にお主が死ぬといつ蘇るか分からないとされるがこの秘伝の恐ろしい所じゃ、なので何か紙に道となるものとその道の作り方を伝授してほしい」


 僕は半笑いの状態でにこりと笑うと。


「いいですよ、ここに世界地図があります。とはいえこれにはなぜか魔法力が宿っておりまして、このポイントです。ここがバラドリ混在王国です。この山を乗り越える道と洞窟を通る道があります。みなさんはどちらが都合がいいですか?」


「うむ、ウルフ族もヴァンパイア族も問題は無いが、姉御の魚人族がなんとも言えぬなぁ」

「そうだねぇ、シェイグの言う通りよ、魚人は穴に入るのが怖い、正確には水と完全に遮断される事がね」


「なら山を乗り越える道で行ましょう、この山を遠くから見る感じと地図から見る感じではなだらかな丘みたいな道でしょう、そこを通り後は下りの道に気を付ければドワーフ王国のエクスバン国家に辿り着く事が出来るでしょう、道案内にメイル姫を同行させたいのですが」


「うむ、わたくしは問題が無いぞ、じゃがマカ姫よ、もし弱ったヒロスケ殿に手を出したら唯ではすまぬぞ」


「ふん、ドワーフ娘を差し置いてエルフが手を出すかい」


「ふ、そうだな」


 2人の姫の間には気合がこもっておりそこには信頼があったのだ。


「なあ、セルフィール国家の決断ならうちにも出来るぞ、その為に来たのだし、いちいちドワーフの道が出来てから次をやるよりはましかと思うぞ」


「ではそうしよう、女王の決断を聞かなくてもいいのなら」

「ふ、本来の女王はうちなのさ、女王とうちの2人で1つの女王となっている。だから安心しろ」


「良かったよ、ではエルフ王国のセルフィール国家の道を今話す。みんな聞いてくれ」


「こりゃー大仕事になりそうだなぁ」

「ふん、シェイグは肉に溺れるよりかは十分健康的になるぞ」

「いつも葡萄酒ばかりの爺さんには言われたかねーな」


「違いねぇな」


「って姉御もですかい」


「お前は爺だ。そしてヴァンパイア族だ。お前らは夜道を作れ、あたしたちは朝で作る」


「まぁそうなりますわな、太陽の光が苦手ですから、死にはしないのですが、病気になりますからなぁ」


「セルフィール国家に行く為にはこの森に道を作る必要があがるが、なるべく森は伐らないで欲しい、エルフ族とは森と通じ合う生き物みたいだから」

「それは承知しておろう。俺様たちの力があると道など簡単に作れるわい、さて、エルフ族の方の道なら洞窟を使った方がいいだろう、ドワーフの方だと洞窟は危険だ」


「なんでそこで使い分けるのさ?」


 マカ姫が尋ねると、


「シェイグさんはこう言いたいのさ、セルフィール国家の近くの山とこちらへ通る道の距離はとても短くされている。魚人たちでも我慢が出来る範囲だ。確か数十分くらいだし、しかし地図から見てもバラドリ混在国家からドワーフ王国に行くには数時間はかかる洞窟の道を歩かねばならない、水が無い恐怖は計り知れないよ」


「なるほど、そう言う事か」


「ではセルフィール国家に向かう道は洞窟を通り、森の道をグネグネと曲がりながらで頼むマカ姫が案内人になってくれ」

「承知、でもお前はその治療で死ぬなよ」

「もちろんさ」


「さらにエクスバン国家に向かう道は丘のような山を滑らかに通り滑落しないように気を付けながら下る道を作ってくれ、こちらはメイル姫が案内してくれ」

「了解、絶対道が完成する前に死なないでよ」

「たりめーだ」


「そして道に使う素材は、問題無ければバラドリ混在国家の木々を使用したい、バラドリ混在国家の木々には魔法が宿っているらしいな」

「ったくいつからそんな情報を手に入れていたんだか」

「正確にはドルゴンが教えてくれた」


 隣にエメラルドグリーンのドラゴンがやってくる。

 どしんどしんと地面を尻尾で叩きつけて。

 優雅に前に出ると、みんながぎょっとして見ている。


「僕は沢山の自然の声を聞く事が出来る。モンスターの声も動物の声もそして植物の声も、普通の木々だとただ途切れ途切れに話すんだ。だけどバラドリ混在国家の森はまるで生命に満ち溢れている。雷で折れてしまった木々達も普通に歌い、その木々に話しかけたんだ。いつ頃からそこにいるのって、そしたら数千年、その長い月日を腐らずにいたんだ。僕はそれを即座に相棒であるヒロスケに伝えたんだ」


「なるほどなぁ、確かにバラドリ混在国家の木々には魔法の生命が宿っている。じゃが、それを伐るのは忍びないが、ヴァンパイア族の族長としてどうだ?」


「それがしは問題が無いというか逆にありがとうだ。彼らは何世紀も存在している。そろそろ違った生き方をしたいと魔力で伝えてくれる。それがし達はその道を示してあげる事が出来ない。そんな時のお主だ。きっと喜ぶだろう、あいつらは伐られる事が死だとは思っていない、その後どう使われるかで死が決まるのだとよく魔力で歌っている。どうやらエメラルドドラゴンよお前は普通のドラゴンでは無いぞ」


 すごく長いセリフをヴァンパイア族の族長であるドンスコが話した。


「普通のドラゴンはモンスターだけと会話する。じゃがお主は動物もそしてしまいには植物とも話す」


「実は鉱石もなんだ」


「「「えええええ」」」


 マカ姫とメイル姫と僕は唖然と口を開く。


「もうただ事では無い、そのエメラルドドラゴンのドルゴンよお主には精霊が宿っているのだろう」


「そうなのかな」


「自信をもてドルゴン」


「さて作戦は終了じゃ、ヒロスケ殿よ覚悟は出来たか?」


「ああ、死ぬ覚悟がな」

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