第44話 交易の品々はすごかった

「ではこれらを持ってきました。歯磨きブラシと歯磨き粉です。この世界にはどうやら歯磨き粉が存在しないようで、沢山の人々を見て参りましたが、皆さん歯が汚くありました。そんな中ウルフ族やヴァンパイア族や魚人族はめっぽう歯を使うと思い持ち込みにまいりました。まずは皆さん歯を磨いてみてください」


 シェイグが恐る恐るといった感じで、

 歯磨きブラシに歯磨き粉を付ける。

 

「この白いクリームは何なのだ?」


「ミントと呼ばれるものです。それで歯をこするのです」


「うむ」


 シェイグは洗面所みたいな所で歯磨きを始める。

 すると恐ろしいことが起きた。


 黄色い歯が磨けば磨くほど白くぴかぴかになっていく、

 実家で同じ事をしても僕の黄色くなっている歯は白くならない、何度も何度も磨くか、それこそ歯科医に見てもらうしかないだろう、


 これに気付いたのはちょっとした出来心で実は僕はこの世界で歯磨きを試した。

 その結果僕の歯は真っ白くなっている。


「うおおおおお」


 鏡と向かい合っているシェイグは、感動の嗚咽を上げていた。


「白くなりましたか、ですが油断すればまた黄色くなります。どうです。いりませんか?」

「いるうううううううううううううううう」


 それはまさに狼男の遠吠えのようであった。

 シェイグ族長はびりびりと震えるように歯を片端から磨いていく、口が泡まみれになりながらシェイグ族長は泡を飲み込んでしまう。


「こ、これは美味だ」


「それは飲み込むものではなく吐き出すものです族長」


「お、おおう、そうなのか」


 口をゆすいでウルフ族族長は初めての歯磨き粉に感動しているのか涙を流す。


「そ、それならそれがしも、それがしは300年間歯が汚くて、美女の血を飲もうとしたらビンタされたことだって」


 ドンスコ族長はヴァンパイアの中のお爺さんであろう、だがやはり血を飲みに来るなら歯は綺麗な方がいいだろう。

 そしてドンスコ族長は歯磨きをする。

 まず最初に歯磨きしたのは白い牙のようなところ。


「うむ、なんともあにゅいな感じだなぁ」


 口の中を磨くドンスコ族長は、

 シェイグ族長とは違って、

 ゆっくりと磨いている。


「おおおおおお、これなら美女も振り向くぞい」


 リアクションは大きくなかったけど、ドンスコ族長の歯はぴかぴかだ。



「次はあたしだねぇ」


 クジラの魚人であり、魚人の族長であるレイガスは、

 ギザギザの歯を歯磨きで磨くと、

 すぐに白くなった。


「うーん、あまり変わらねぇ」


「そうか、レイガス族長は毎日水の中にいるから牙は綺麗なんだ」

「そういうことかい」


「では次ですがなんと僕の世界では味のある飲み物をジュースと呼び、この世界にはないであろう味の5種類を持ってきました」


「おおお、それは今日深い、肉のつまみにはいいかもな」

「酒に勝てる飲み物だのないのだがね」

「ふふ、楽しくなってねぇ」


 シェイグ族長、ドンスコ族長、レイガス族長が順番に言葉を発すると、

 

「メイル姫とマカ姫は水を持ってきてくれ、ドルゴンは見物で」


「「了解」」

「おもしろいなぁ」


 2人の姫が答えてくれると、

 その後ろではドルゴンが頷いてくれていた。


「ではこの水を」


 2人が5個の水が入ったコップを持ってくると、僕は1本目にコーラの素を入れる。

 大きなコップに入れたので、沢山のコーラ水が出来ると。

 僕は小さなコップ5本にコーラ水を入れる。


「マカ姫とメイル姫も飲んでいいよ」


「「やった」」


 2人の姫が喜んでくれると。

 その場の全員がコーラ水を飲みだす。


「な、なななんあななななんだ、このシュワシュワは感じた事のないこの爽快感」

「れ、レイガス、飲んでみろ、仰天するぞ、それがしはびっくりしている」


「男連中はまったく、うおおおおおおおおおおおお、これはなんだ。炭酸だな、これは炭酸だ、たまに水の中に出現している」


「次もご賞味ください、次はメロンソーダです」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」


 マカ姫といメイル姫も入っています。


「次は抹茶です」

「「「「「し、しぶいがうめええええええ」」」」」


「次は野菜ジュースです」

「野菜嫌いななんだけどなぁ」

「いいからシェイグ飲んでみろ」

「でもなぁ」

「姉さんとして命令するよ」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお」」」」」


「し、信じられないこれが野菜なのか? あのまずすぎる人参、危険な緑のモンスターピーマン。怪しく光るなすび」

「全部そのジュースの中に入っていますよ」


「お、恐ろしいぞ」


 シェイグさんは野菜ジュースの恐怖を味わっているようだ。


「最後がこの白い魔物カルピスです」

「これは牛乳なのか?」

「それに近いですが、少し違います」


 そこにいる全員が訳のわからない表情をしながら、

 カルピスをごくんごくんと飲み干す。

 その場にいた是認がほんわかとする。


「うんめぇえええええ」

「これはデリシャスだ」

「魚よりうめーぞ」

「姫としてこのまろやかを味わったことがない」

「わたくしもだぞ」


「コーラ、メロンソーダ、抹茶、野菜ジュース、カルピス。以上になります。めちゃくちゃもってきてますが、どうしますか、あと3つほどボードゲームをお持ちしました」



「うおおおおおお」

「うっきうっきうきい」

「あがやあっはあいあはあ」


「「族長どうした!」」


 2人の姫は唖然しながら、

 僕は笑いを堪えながら、

 隣ではドルゴンが口の端を吊り上げて。

 

 フェイブマックスXごと入ることが許可されていたので、

 そこから3つのボードゲームをもってくる。


「これが将棋、囲碁、リバーシとなります」


「す、すごいぞ、俺様はこれを待っていた。どんなに最高な歯磨きだろうと、どんなにうまい飲みものだろうと、俺様は遊びにプロになる」


「ふ奇遇だな、シェイグ、それがしはそのしぶそうな将棋というものをやってみたいなぁ」


「ふ、まったくシェイグもドンスコも大人になりなぁ、それで、リバーシってなんなのさああああ」


 どうやら族長たちは落ちました。


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