第41話 バラドリ混在王国

 数分ほどの移動で問題となる山の洞窟にたどり着いた。

 これだけのスピードが出たのは、僕がフェイブマックスXというバイクに乗っていたのと、サイノスターという荷車があった事だ。


 巨大な洞窟であった。

 黒黒しい闇色の空間を照らし出しているのは、松明の光だった。


「どうやら定期的に使われているから、松明があるようだな」

「しかも魔法でコーティングされている」


「やはりか、松明の部分が全然減っていないから不思議だった。やはりエルフ族だなマカ姫は」

「そう褒めるな」


「これならサイノスターの荷車でも行けそうだわね」

「メイル姫は怖くないのか?」


「あら? セルフィール国家の姫君であられるマカ姫は怖いのかしら?」

「いや、そういう訳ではないのだ。エルフの民とは光の民と言われ闇に気悲観を抱くのだよ」

「世の中でそれを怖いというのよ」

「黙れメイル姫、それ以上言うようなら斬るぞ」


「マカ姫も落ち着け、そんな簡単に仲間を殺されたらたまらん」

「ご、ごめんなさい」



「ドルゴン降りれるか」

「任せて」


 目の前に全身がエメラルド色のドルゴンが着地すると、

 サイノスターがぶるるんと鳴き声を上げる。


「サイノスターとは友達になったんだよ」

「それは良かった。気になったのだがドルゴンは動物やモンスターの声が分かるのか?」

「それはもちろん、ドラゴンだからね、逆にヒロスケとかが言葉を理解できないのかが謎だよ」

「そ、そうなのか」


 僕はドルゴンの活用方法を閃いていたのであった。

 動物やモンスターとも交易方法を考えた方がいいのだろう、


 それは頭の片隅にしまっておく思い付きであった。


「メイル姫とマカ姫がこの洞窟に詳しいそうだな」

「そうよ、国王2人が無事だった頃はよく連れていってくれた。国王2人というのは父上と母上の事よ2人はとても強くて、でも……」

「きっと生きている、そう信じよう」

「はい」


「わたくしはドワーフ国王と一緒にバラドリ混在王国にやってきていましたわ、わたくし達が向かう他種族の混在王国をバラドリ混在王国と言うのです。ちゃんと覚えておくようにです。それとあそこには王様はいないからそれは肝に念じておくようにです。それぞれの種族の族長が代表となってできる円卓会議というものを採用しているのです」


「へぇ、円卓会議か、僕の世界にも昔の時代に合ったみたいだよ」

「へぇ、初耳ですわ」


「さて、ベピィーとリフィーはサイノスターの操縦に集中してくれ、洞窟の壁にタックルされて奈落の底は御免だ」


「「任せろ」」


「では出発だ」


 僕たちは松明の光を頼りに、

 発進した。


「やはり前来たときよりも厳重に魔除けをされている」


 マカ姫がそのようなことを呟いている。


「という事はモンスターの発生率がすごいのか?」

「いやそういう訳ではない、先程空が暗闇に包まれていたのは見ただろう?」


「ああ、あれは雨雲かと」


「あれは雲ではない、ドルゴンも気づいたのではないか?」

「あれは、雲であって雲でない、雲そのものがモンスターなんだ」

「そんなことはあり得るのか?」

「僕は母さんドラゴンから卵の中にいる時に色々と教えてもらったのだけど、トロール領ではありえないものがありえるそうだよ」

「今まではこちら、つまり人間領に来なかったのか?」

「これなかったが正しい、ディン王国の人々は異世界人狩を始めたんだ」

「それは本当なのか」

「ああ、異世界から召喚したものや偶然お主のように異世界からやってきたものを集めて、山の人間側を統一するもりだ」


「そういうことは早く言ってくれよ」

「てっきり知っているものだと思っていた。ありえないものがありえるという言葉を知らなかったからもしやと思ってな」


「僕はそんなところと交易をしようとしていたのか」

「その通りだ。あなたは1人の異世界人として莫大な権力が必要だ。そうでなければ利用されるのみ」


「マカ姫色々とありがとう、本当に僕はこの世界だと無知だったよ」

「そんなことはない」


「ドワーフ国王の父が言ってましたが、ウルフ族とヴァンパイア族はもともと喧嘩の多い種族でした。ウルフ族はモンスターを食らい、ヴァンパイア族はあらゆる種族の血を飲む、ウルフ族の食料であるモンスター達を血抜きにしてミイラ状態にしたせいで、ウルフ族の食事がなくて、飢えていった。そこで魚人たちが調停したの」


「魚人ってすごいんだなメイル姫」


「そうよ、魚人族はウルフ族に家畜の育て方を教え、ヴァンパイア族はその家畜をぶつぶつ交換して、血を飲む、だがすべての血を飲まずに再びウルフ族に返す。そこでまた元気になった家畜の血を飲む。そういう伝承になっているの、その方法を学んだヴァンパイア族は人間や異種族の血を飲むようになった。もちろん死なない程度にね」


「ちょっとぞっとする話だけど、家畜か、僕の世界にも家畜はいるけど、家畜をリラックスさせる道具とかリサイクルショップにあれば持ってくるよ」

「それはいいね」

「残念だけど今回は持ってきてないかもしれない」



 僕たちは暗闇の洞窟の中を松明の光を頼りに、ひたすら前へ前へと突き進んでいた。

 30分くらいが経過すると。

 目の前に大きな光が見えてきた。


「1つ気になった。バラドリ混在王国に何を交易品として持ってきたのだ?」

「えっと、歯磨きブラシと歯磨き粉を持ってきた。なんとなくだけど色々な種族がいるならこれが良いかと」

「その他は?」

「えっと、ジュース5種類の粉」


「なんだそのジュースとは」


「ついてからのおったのしみー」


「ひどいぞヒロスケ殿」


 思わず僕は爆笑していた。

 だって色々な種族がいるということは色々な味が好きなはずだ。1つの種族がリンゴが好きならもう1つはバナナが好きかもしれない、

 なので食べる物はこちらに持って来れない謎の法則があるので、

 粉にしてしまえば種と同じ原理かと思ったら通用した。


「見ろ、出口だわ」


 メイル姫が指を指して大きな声を上げる。


「やっとかわしの目がしょぼしょぼしてきたわい」

「わしは尻が痛くて悲鳴をあげそうだわい」


 ベピィーとリフィーが髭もじゃと髪もじゃをアピールしながら、

 にやりと2人で肩を抱き合わせる。

 そんな事をサイノスターの荷車の上でやるものだから、サイノスターが壁に激突しかける。


 ドルゴンが慌てて声をあげると、

 サイノスターは正気になった。


 山の向こうに広がる景色。

 それは幻想そのものであった。


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