第27話 特産品は後程、ドラゴンの子供が出来ました
ダイヤモンドの剣が伸び縮みする。
まるでぐねぐねとゴムのように伸びるそのダイヤモンドの剣は、まさに宝石の剣に相応しく太陽の光を吸収していた。
風と摩擦するように、空気を両断していく、
2体のゴブリンの胴体が半分になって地面に転がる。
3体のゴブリンが槍を掴んで思いっきり投げる。
俺の右肩、右足、脇腹に槍が突き刺さる。
血反吐を吐き出しながら、薬草団子を飲み込む。
一瞬にして傷が癒えると、
また走り出す。
伸ばしたダイヤモンドの剣で3体のゴブリンの首を両断する。
まるでサッカーボールのように頭が転がる中。
5体のゴブリンと相対する。
そいつ等は全員が弓矢を構えている。
矢が放たれる。
全身に矢が突き立つ。
頭と首をガードしながら、
薬草団子をまた取り出して食べる。
また一瞬にして傷が回復する。
走り出す。
マラソン選手のように構えながら走る訳ではないけど、ダイヤモンドの剣を振り落とす。
5体のゴブリンがミンチになって吹き飛ぶ、残りは10体。
ぜいぜいと息を吐きながら痛みで頭がおかしくなる。
一瞬にして薬草団子で回復したとしても、致命傷を負った瞬間の激痛は頭に残っている訳だ。
その為、それを何度も繰り返すということ精神的に持つものではない事は、そんな事、僕だって分かっている。
「それじゃあ、10体くらいなら」
魔人の右腕を使用するまでもない、後は草花のローブで十分だ。
衣服に花を出現させていく、ローブ全体から草花が増殖していく。
そこからマシンガンのごとく種が発射され、あっという間にゴブリン達の全員が全滅した。
ただただ呆然と僕は立っていた。
そこには一個のドラゴンの卵があった。
その卵か割れた。
中から出てきたのはエメラルドのような宝石の鱗をした赤子のドラゴンだった。
母親であるドラゴンはゆっくりとこちらにやってくる。
我が子を見て涙を流しながら。
【人間、この子をよろしく頼む】
「いいですけど、あなたは?」
【我はもう長くない、この傷では無理だ。では、我はその子の星となろう】
大きな翼を羽ばたく、子供のドラゴンはきょとんとして親を見ている。
だけどその子供はこちらの事ばかりを気にする。
刷り込みだろう、卵から出て来て一番最初に見たものを親だと思う、つまり僕を親だと思っている。
「お前の本当の母親は星になる」
「ぐえ?」
まだ赤子には理解できないのか、それでも寂しさを覚えたのか。
「ぐええええええ」
と大きな声で鳴き始めた。
その頭上には、母親ドラゴンが、遥か空を突き破り、どんどんと小さくなっていく姿が見えた。
宇宙に出ていき、1つの流星となって消えていった。
赤子のドラゴンは大粒の涙を流し続けていた。
「お前はドルゴンだ。見たところオスのようだしな、よろしくなドルゴン」
「ぐええええええ」
まずはこいつに言葉を覚えさせる必要があると悟る。
そもそもドラゴンは人間の言葉を理解できるのだろうか?
先程の母親ドラゴンは意識しながらでも人間の言葉を話していた。
という事は人間の言葉を話す為に訓練も可能だという事。
色々とやる事が増えて頭が痛くなりつつも遠くにいたネンネと合流する。
「きゃあああ、可愛いい」
ネンネはドラゴンの赤子に夢中になっていた。
「こいつの名前はドルゴンだ。覚えてくれ」
「ドルゴンちゃんは一緒にお風呂はいりませんか?」
「ぐえ?」
ドルゴンは非常に困った顔をしつつも、
僕はドルゴンの割った卵を回収するのを忘れなかった。
色々と成分を調べれば何か見つかるかもしれない、林介の手土産になるだろう。
帰り道はドルゴンがいたので、フェイブマックスXに乗ることはせず、歩きで村に戻る事とした。
村人達はドルゴンのことを歓迎してくれた。
ドルゴンの家は村長娘宅の家の裏倉庫を片付けるなどをして造った。
ドルゴンはお腹が空いたのかこちらを下から上に眺めている。
そう思った一瞬で裏倉庫に隠れていたネズミを食ってしまった。
これには驚きつつも。
「ドルゴン、いつでも外に出ていいからな、お腹が減ったらネズミなんなり食ってくれ」
「ぐえ」
了解と答えられたように感じつつも、
ドルゴンの裏倉庫の入り口には留め具などはせず、いつでも出ていけるようになっていた。
ドルゴンの中では恐らく親は僕となっているので、勝手にいなくなって、野生のモンスターに襲われるという事は無いだろう。
僕はそこのところでほっとしつつも、テクスチャ商人を探す事とした。
ついに特産品について語り合う時が来たのだ。
テクスチャ商人は川の近くのため池にいた。
そういえば乾燥機も準備しないとと思い出した。
「それにしてもすごい技術ですよね、この機械は、成分は何でできているのでしょうか、分解してみいたいですけど、この川だって普通では作れないですし、あの人は何者なのでしょうか? 異世界から来たというのは聞いていますが」
独り言のようにテクスチャ商人が呟いていると。
「探しましたよ」
「おお、これは」
「特産品が決まりました。見に来てほしいのです」
「それなら向かいましょう、それでどのようなものにしたのですか?」
「フィギュアというものです」
「そ、それは?」
「僕たちの世界では当たり前に売られている人形のようなものです。この世界で売る事が出来ると思ったのです」
「それはなぜですか?」
「この世界の技術ではフィギュアを作る事は出来ないからです。いくら粘土細工の達人でも、この色は付けられないでしょうし、このような形のものはないです、まぁ来てください」
わくわくするテクスチャ商人と僕は村長宅に向かったのだ。
「ってえええ、えドラゴンの子供おおおお」
なぜかテクスチャ商人はそっちのほうが驚きであったようだ。
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