第25話 ガチャガチャ

「あれじゃね、ガチャガチャじゃね」

「はい?」


 僕は大きな口を開けて弟の林介が意味不明な事を言い出したので正気を疑った。


 もしかしたら10億貰って頭が可笑しくなったのは僕だけではないのかもしれない。


「今、兄貴さ俺の事さ頭がいかれたと思っただろ」

「違うのか?」

「ちげーよ、普通にもし異世界でこの世界に来て、ガチャガチャなるものがあれば、やってみてーだろ何が出てくるかとかさ、全種類集めたいとかさ、兄貴と俺はさ、少年時代の時父さんと母さんにわがまま言ってガチャガチャしただろ、そんな父さん母さんもガキの頃はガチャガチャしてんだよ、世の中ガチャガチャになってんだよ」


「ど、どうした林介よ頭が逝かれてしまったか」

「勝手に殺すなや」


「それもある、ガチャガチャか、だがリサイクルショップにあるのか?」

「あんだろガチャガチャの道具自体は、あとはフィギュアとか色々あっからさ、適当にガチャガチャを異世界にもっていって、毎回フィギュアを入れてさ、一回やるのに1銅貨必要とかにすればいいんじゃね?」

「すげー投げやりなんだけど」


「それがだめなら次考えればいいっしょ、あとフィギュアはこのいらない巨大倉庫ゾーンにはないぞ、母ちゃんから買ってくるんだ」

「なぁこれやばいよな、突然フィギュアを爆買いする息子ってどう映るの?」

「そうだな、病気になったと思うな」


「どうすんおおおおお」

「変装していけばいいだろうがああああ」


「ならてめーがいけええ、これは兄貴命令だ」

「ふ、俺は今は1つの会社を収める社長、お前は異世界に旅立つ謎の男、どっちが立ち場上かね?」


「はは~」


 僕は歩き出した。

 母さんにバレないようにフィギュアを爆買いするという任務に。


「ほれカツラとちょび髭とまるまる眼鏡」


「これ完全に変質者じゃねーかよ」

「だって面白そうだもん、がんばれ、監視カメラにハッキングして見てるから」


「なぜに自分の家族が経営するお店の監視カメラをハッキングする必要があんのおおおお」

「気にすんな」


「とほほ」


 僕はカツラを被り、ちょび髭をつけて、まるまる眼鏡をつける。

 ついでにと衣服は浴衣姿。


 もはや変質者でしょーーーーが。



―――――――――――――

リサイクルショップ入り口

―――――――――――――



 目の前の自動扉がからんころんとなりながら開く、中に入るとお客案が多数いる。

 みんなこちらを見て笑うのを堪えている。

 一番笑いたいのは僕だよとは突っ込まない。


 母親は放心状態で壁を見つめている。

 お袋大丈夫か、頭でも打ったか。



 そしてお袋は突然にやりと笑いだす。

 こええええええ。何かに目覚めたぞ。

 

 お客さんはリサイクル品を購入していく人や、ウィンドウショッピングを楽しむ人がいた。

 

 僕は迷わずフィギュアコーナーにいく、あとカプセルをまとめて売っているところがある。

 カプセルの大きさより小さいフィギュアを探して。

 カゴを用意すると、そこにあったフィギュアをすべて爆買いするつもりのようにカゴに入れては入れては入れては入れまくる。


 近くにいる子供のお客さん達はヒーローを見ているようにこちらを見ている。


 ふ、少年達よこれがダメな大人だ。


 大人達は少し残念な人でも見るかのようにしている。

 ふ、いいか大人達よ世の中の金の周りは僕のような人で成り立っているのさ。


 カゴを3箱くらい持ち上げる頃には、この店に売っているフィギュアが全てなくなり、子供達は僕の事を指さしてスーパーマンとか言っているんだが、それは違うからね。


「えと、これレアなので200万しますが、こちらは300万で、こちらが500万です。合計で1000万円です」

「カード払いで」


 もはや大人も子供も訳の分からない顔をしている。


 僕だって訳分からんよ、フィギュアで1000万使った時点で、僕の寿命は尽きるぞ、後もはやこれって村開拓じゃなくて村寄付じゃねーかよ。


 だがこの開拓があったおかげで10億稼げたのだから痛い出費だと思いつつも。


 僕は金持ちの仲間入りだ~


 と、ぱっぱらぱーになっていた。


 自動ドアを潜り抜ける最後のミッションは完了。

 後は母親にばれないようにこのドアを潜り抜けようとしたまさにそのときだ。


「お客さんお待ちください」


 僕は唖然としつつも。


「これクーポンなのですけど500円お買い上げに1枚で20パーセント引きなのですが」



 レジから無限のクーポンが流れ続けている。


「いえいりませんので」

「困りますあれだけのクーポンを配るのにどれだけかかると思っているんですか」

「客のせいにされましても」

「あのクーポンの量みてくださいよ、あんなにさばける自信がないですよ、お客さんが1000万円も使うからですよ」

「そこは感謝しろ、高収入とクーポンの処理どっちがうれしくないんだよ」

「高収入でしょ」

「だからお袋は、袋をください」

「はい、袋、とにかくクーポンをつめこむから」


 あぶねえええ、お袋と言いそうになったぞおおおお。


 ドアの向こうでは爆笑してオットセイみたくなっている弟がいた。


 クーポンを数千枚はもらうと。

 これどうするんだろうなぁとか思いながら。


「よくやった兄貴」

「ぜんぜん嬉しくねーし疲れたよ」


「まぁがんばれ」

「カプセルに詰め込むの手伝えよ」

「あ、俺ちょっと仕事が」

「にがすかあああああああああああああ」

「ぎやあああああああああああああ」


 僕は不審者の姿で弟の林介を追いかけまわした。

 子供達からヒーローと呼ばれるようになった。


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