第20話 川結合しました

 ようやく川の通路が完成してきた。

 人数が人数なので3時間程度でなんとかなってしまえるほどの人々のがんばりだった。


 最後の壁は村長娘ネンネの役目となった。


 村人達はわくわくとその光景を見ていた。

 ネンネはゆっくりとスコップを突き刺す。

 ヒビが入ってくると安全地帯まで避難してもらう。


 心臓がばくばくと脈打つ。

 川の流れる音が轟のように振動となって伝わってくる。 

 次の瞬間、まるでダムが決壊するように崩壊する。


 川の水が勢いよく川の通路の穴に流れこむ、そのまま川の水は進み続ける。

 


 僕達は明日に向かって走り出す。

 それが無限に続く事のようだ。

 

 もちろん、水があるという事は流れ去る場所も必要だ。

 そこは事前に作ってある。


 そこの壁となるダムはまだ決壊させていない。

 川の流れが勢いとなってその出口を作るはずなのだから。


 村人達はまるでうきうきするように、スキップしている。

 僕も同じようにスキップすると、ラングンとウィルソンが爆笑している。


 ディボンドはわくわくしているのかうきいいいいと叫び出す。

 この村は今、1つになろうとしていた。


 水を溜める場所にある程度水が溜まるのを見届けると、次は溜まりすぎた水がある程度の高さに達するのを迷路通路のように、次の出口にむかって水が流れ出す。


 それを村人達と一緒に追いかける。

 出口に到着すると。

 川の威力が破城槌のように川と繋がる部分を破壊した。


 水が溢れかえる事はせず。


 川から入るところ、溜めるところ、ある程度溜まると出ていくところ。


 川の計画は完成したのだ。


 村人達はそれぞれが大きな声で叫びまくっていた。


 その日はお祭り騒ぎとなった。


 僕は次なる仕事のため動き出す。


「ネンネ、次は洗濯機だ。楽しみに待っていろ」

「はいです。お願いします。何から何まで」

「安心してくれ僕も儲かってるから」

「はは、そうですよね、これが」

「そう異世界交易そのものさ」


 僕は親指をあげてにやりと笑って見せた。


―――――――――――――

村(異世界)→巨大倉庫(現実)

―――――――――――――



 いつも通りの巨大倉庫に戻ってきた。

 まずは1つ目モグラの爪80個と1つ目モグラの目玉4個を持ってきた。

 もちろんいつものごとく林介がタバコをふかしながらこちらを見ていた。


「よう兄貴」

「おう、世話かけるな」


「気にすんな、さっそく依頼だ。スライムの素をできるだけ沢山、あとプラントの草もできるだけ沢山、薬草団子と薬草もできるだけ沢山、もはや国が動き出した。安心してくれこの場所のことは内密にしてある」


「それは頼むよ」


「それでまた新しい物だな」

「その通り、1つ目モグラの爪と1つ目モグラの目玉だ。爪は装備となると言われていたから、装飾品とかだろう、目玉は半分食べるだけで失明した人の視力を復活させるらしい」


 僕は一呼吸おいてから、こう切り出した。


「今から病院に行って確かめようと思っている。くるか?」

「やめとくよ、沢山で行けば目立つしな」

「そうかい」


―――――――――――――――

巨大倉庫→手稲総合病院

―――――――――――――――



 僕はさっそく車で移動することにした。


 袋の中には目玉を溶かした液体がある。

 さすがに目玉を食えと言って食える人はいないと思うし。


 手稲総合病院に入ると、見舞客のふりをして、入る事に成功する。


 後は視力を失った人達があつまる病室がある。

 そこに到着すると6人の子供達がいた。


 子供たちは誰かが部屋に入った事を察すると、声を掛けてくれる。


 6人ということは目玉3個分だ。1個は林介に研究用に提供してあるので、危なかった。


「みなさんの視力が戻るかもしれません、飲んでほしい液体があるのです」


 子供とはすぐに大人を信じてしまう。

 みんなわいわいとなり、それぞれが飲み込む。


「コーラの味がするよ」


 どうやら1つ目モグラの目玉はコーラの味がするらしい。


 すると6名の瞼の奥深くで光が輝きだした。


 それはとてつもない光となり、その瞳の光はこの前視力を回復させた人のより格段に輝いていた。

 次の瞬間には目をあけて僕を見てにこりと笑っていた。

 1人また1人と涙を流していた。


 大きな声できゃっきゃした。


 みんな喜びに夢中になっている。


「おじさんは立ち去るよ」


 そういって看護師達が子供達の様子を見に来て看護師達が悲鳴をあげて、看護師達も喜びの歌をあげる。

 その背後には寂しそうにいなくなるおっさんがいた。


 それから巨大倉庫に戻ると、現在は夜の18時になろうとしている。

 

 リサイクルショップがまだ開かれているので、母親に会いに行く。


「あんたご飯食べた? 用意して置いてあるのにいつもいつも残すから」

「ごめん、お袋、仕事が忙しいんだ」

「あんたら兄弟で悪知恵働かせてるみたいけどさ、で何用さ」

「洗濯機を10個ほど欲しいんだ」

「ぶほ」


「お袋これは冗談ではない」

「なんか施設でも作るんかい?」

「そんなところ」

「でもね、いくらリサイクル品だからといっても10個洗濯機が必要となると100万は必要だよ、最悪粗悪品なら30万でなんともならん話でもないけど」

「なら100万で」

「あんたいつどこでそんな大金を」

「頼む、お袋」

「わーったよ、そこにある10個の洗濯機もってきな、カードでいいかい」

「はい」


 カードで払うと、残りは900万になっているはずだ。


 ちょうど林介がこちらにやってきていた。


「手伝うぜ」

「ありがとう」


 2人で協力して洗濯機を巨大倉庫に運び、リアカーに2台乗せる。

 さすがに大きさ的にも2台ずつが限界だ。


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