第16話 草刈り機デビュー


 30名の草刈り機部隊は初めての草刈り機に触れてもらっていた。

 全員に専門用語で伝える事はせず、行動と仕草で使い方を教えていた。

 1人また1人と使い方を理解していくと、それぞれの草刈り機を起動させプラントモンスターとのバトルをおっぱじめている。


 隣にはネンネがおり、彼女は高速で回転する草刈り機の歯に恐怖を感じているようだ。


「あの草刈り機で人を襲ったら凄いことになりそうです」

「たぶんミンチかと」


「これって自衛の為の武器にはならないかな」

「うーん、いいかもしれないけど、結構恐ろしい部隊になりそうだよ」


「うん、行けると思う、山賊とか襲ってきたらぼこぼこにしてやりましょう」

「何気なく恐怖を感じるよ」


「さて、ヒロスケ殿はプラントモンスターについてどこまで知っていますか?」

「いえ、あまり知っておりません」


 僕の答えに目の前のネンネはにこりと微笑むと。


「簡単な説明を省きまして、要は雑草の進化だと書物には残っています。これも数100年前のものなので確たる証拠ではありませんが」

「お願いするよ」

「では、プラントモンスターの倒し終わった死体は頑丈な建物の骨組みになるのです」

「いいか? ここにある建物と言えば家とかで、それも木々でできているものだよな? それよりも頑丈なのか? 死体ってことは草みたいな奴だろ?」

「その通り、グネグネと曲がり、建物の骨組みにした所で松明で燃やすと頑丈な骨組みとなります」

「なるほどなぁ」


 つーことはこのプラントモンスターの死体、つまり素材を現実世界に持って帰ればすごいことに、現在僕の瞳はお金のマークになっているに違いないと思った。


 プラントモンスター討伐は草刈り機によって本来なら1か月はかかるものを6時間で終わらせる事に成功した。


 プラントモンスターはぐねぐねと動くだけで、根っこから動くことが出来ない、なので攻撃してくるとしたら蔓とか葉っぱとかであった。



 遅めの昼飯をみんなで食べていると、ネンネがもじもじしながら弁当を持ってきてくれた。


「ねぇ、食べませんか?」

「うん、食べよう、おお、これはなんだ?」

「これはスライムのゼリーです。こちらがプラントモンスターの根っこです。根っこはかじると中から汁が出てきます」

「お、おう」


 僕は恐る恐るゼリーをスプーンで口に運ぶ。

 口の中でプルンと動くとゆっくりと噛みしめる。


「こ、これは、ソーダ!」


 スライムのゼリーの味はソーダそのものであった。


 スライムは冷凍または窒素で凍らせると、めちゃくちゃ固くなる。

 プラントモンスターは燃やすと固くなる。

 この2種類の性質変化に僕なりに推論を立ててみる事にしてみても僕は研究者ではないのだ。リサイクルショップのしがない店員だ。


 時刻は午後の3時くらいで一度現実に戻る事とする。

 もちろん手押しリアカーの荷物のところに食べられるスライムとプラントモンスターの死体を持ち運びながら。


「あとスライムはどうやって食べられるように料理するんだ? 普通に殺しても粘土みたくなるし」

「殺した後にその粘土を何度もパンを作る様に地面に叩きつけて、あとは水を入れると自然とゼリーになるわ」

「了解っと」

「次はいつ頃来ますか? ヒロスケ殿」


 ネンネの視線が僕に注がれている事に気付いていた。

 そして彼女は女性のおねだりをしているような瞳をして、こちらを下から上に見上げている。


 僕は頭をぽりぽりと掻きつつもウィルソンとラングンは喧嘩をしながらスライム早食い競争をしており、ディボンドとネッティーは大きな欠伸をしているだけだ。

 

「ああ、すぐに来るよ」

「すぐではいつか分かりません」

「答える事は出来ないんだ。なぜか? でもこれだけは言っておく3日以内には帰ってくる」

「はい、その言葉を信じて待っております」


 かくして僕は現世界に戻る事となった。

 いつものごとくリサイクルショップの色々としまわれている倉庫の謎の扉から出現する僕。


 リアカーに積まれてあった物を下す。

 スライムはさすがに死んでいるようで、生きていたら少しまずいと思いつつも。


 目の前の椅子に爆睡している弟がいた。


 林介ははっとなってこちらを見ると涎を袖で拭うと、目の前にやってくる。


「兄貴、凄い事が分かった」


 林介はとんでもないものでも見つけてしまったような、余裕のある顔で僕にこういったんだ。


「あの素材、やばすぎる」


「どのようにやばいんだ?」


「まずスライムの素と薬草団子と薬草の研究結果だが、スライムの素は建設業界で波乱を呼ぶかもしれない、あれを冷凍したらとてつもなく堅くなる事が分かり、それはダイヤモンドよりも固いことが判明した。しかも燃やす事により柔らかくする事ができるが、スライムの素にコーティングすれば、火事でも問題がないぞ、まずリサイクルショップとしてネット販売しようと思う、もちろん国にはそれ専門の弁護団を派遣した。ふふふ、これで金儲けだぜ」


「それで薬草団子と薬草は?」


「それも医療業界が暴れ牛のごとく手をだそうとしている。中にはどこから採集しているか聞いてくる輩までいた。兄貴、後ろには気をつけろ」

「それは分かってるさ」


「薬草団子はわが社で錠剤に出来るかで研究をしている。その間兄貴はヒーローのごとく病院に現れて困っている人でも助けてろよ、俺は日本中に、そして世界中に薬草団子プロジェクトを開く」


「は、はは、すごいなぁ」

「もちろん兄貴が頑張るから出来るビジネスだ。兄貴6割で俺が4割の報酬でどうだい」

「それはいいけど、でも地元の人が楽しめるリサイクル品って大事だと思うわけで、林介の方法だと日本中とか世界中とかだけどさ」

「うーむ、あれだ。そこんところは兄貴が異世界で何かしら集めてくれ」

「了解っと、それとノーマルの薬草はどうだった?」

「あれも恐ろしいことがわかった。漢方薬にしたところ、生活習慣病が3日で治療された。それもいくら食べても寝転がっても体は太ることもしないし、再発の恐れもないそうだ。医者もびっくりして、俺の事を変な薬をもってきたとか何度も問い詰められたぞ」

「は、はは」


「そんな報告で、俺からは以上だ。次は兄貴の番だ」



 僕はこくりと頷いて。

 語り始めることとした。



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