第17話 目的
「つまり兄貴は今の村に何が必要かと考えているわけだな?」
「そうなんだよ、周りには森と林はある。スライムとか弱いモンスターもいるわけで、そのおかげでスライムの素には困りそうにないんだけど」
「それはすごく助かる。建設業界でスライムの素はコンクリートよりも鉄骨よりも重要な資源とされているからな」
「本当に林介は仕事が早いよな」
「それで今の会社の社長になったわけさ」
現在巨大倉庫の中でテーブルの代わりに段ボールを設置して缶コーヒーを2人して飲んでいた。
こんな感じで兄弟という関係がとても大切なものだと思えたのはとても久しぶりなのだ。
「兄貴とこうして缶コーヒーを飲むなんて久しぶりだな、よく子供の頃はサッカーとかやって帰りにジュース買ってた」
「そそ、林介がとてつもなくサッカーが上手いから、僕は必至で追いつこうとしていた」
「兄貴がとてもとろかったのさ」
2人して過去話に花咲くと。
「僕は色々と考えたんだけど水資源が必要な気がするんだ。村を見てみるとさ、水とかを井戸から引っ張ってさ。飲み水も井戸水で、作物は天気に任せるしかなくて、最悪井戸水で畑に水を与えるそうでさ」
「うーん、近くに川とかないのか?」
「そうだな、缶コーヒータイムが終わったあちらへ行くとするよ」
「リサイクル品で洗濯機とかあるけど、さすがにいらないもの用の巨大倉庫にはないぞ、リサイクルショップの方にあるだろうし、そうだ忘れていたがスライムの素と薬草団子と薬草の仕入れを見込んで1000万円の支給がでたんだ。兄貴に渡しておくよ」
「すごい大金だな」
「この事業が成功すると億単位で儲かるし、異世界にはまだまだ資源があるだろうし、それに兄貴の言っていた異世界と現実世界でアイテムが2つの空気に触れることで、強化されるって説あるだろ、あれも期待出来るんだよ」
僕の右手の平を引っ張り出すと弟は右手にカードを置いた。
「これうちのリサイクルショップでも使えるからさあ、洗濯機とか色々と買いなよ、さすがに無断で洗濯機などを持ってくとお袋が黙ってないからさ、お袋がなんで洗濯機必要なのって聞いたら適当に答えればいいさ」
「いやに投げやりだな」
「お袋は細かい事を気にしない女性だからな、それで俺達いろいろと笑い合う関係になれただろ?」
「だな」
僕は当方にくれながら微笑んだ。
缶コーヒーの液体を口の中に含んで、ごくんと飲み干し頭の整理が決まった。
「林介、色々とめんどくさい交渉事をやらせてしまってごめんな、今度どこかに外食に行こうぜ」
「おう、兄貴も異世界とやらで、のたれ死ぬなよ」
「たりめーよ、それと今日持ってきたプラントモンスターの死体は建設に使えると思うし、こっちは粘土のように何度も叩きつけて、水をつけるとゼリーになって食べられるらしい、もってけ」
「助かるよ、この草ってモンスターなのか?」
「そうらしい」
「うちの研究社員が燃え上がるぜ」
「それは良かった」
久しぶりの弟との会話を楽しんだ夜であった。
そしてこちらの時間と異世界の時間はリンクしているので夜中の状態であちらに行くのはあまりお勧めではないのは分かるのだが。
それでもじっとしていられなかった。
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リサイクルショップ(現実)→滅びた村(異世界)
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弟の林介がいなくなると僕は悠然とこちらに微笑んでいる扉に入る。
出たのは山のような隙間の所、そこには扉があるが、この世界の人々にはこの扉を見分けるすべはない。
数分歩き村に到着する。
現在夜中で、星明りを頼りに歩く事から、この村には光設備が必要だと思った。
まず松明で動いている人々は見えるがあまり人々は夜に外には出ないみたいだ。
もし光が常備輝き続けていれば、夜でもこの村は発展していく事だろうし、夜の仕事を増やして、村を活性化する事が出来るだろう。
光設備については課題として取っておく事とする。
星明りと村の家々の松明の光を頼りに村長娘ネンネ宅の扉をノックすると、その中から可愛らしい女性であるネンネが出てきた。
「あら、こんばんわ、入って、現実世界の日本はどうだった?」
「そうだな」
僕は中に入ると、テーブルの椅子に座った。
ネンネが対面に座ると、一杯の薬草紅茶を出してくれる。
「これ、薬草と茶葉を合わせたものなの、この村ではリラックスの時に飲まれるのよ」
「そうか、とても美味しい、実はここに来たのは、この村を発展させる方法を考えていた。プラントモンスターの死体とスライムの粘土を使えば頑丈な建物が造れるだろうしな、プラントは燃やせば固くなり、スライムは冷凍すれば固くなる、本当にこの世界の仕組みが面白い」
するとネンネはこちらを見て。くすりと笑う。
「沢山話しているヒロスケ殿はとても子供みたいです。そしてあなたは3日後に戻ってくるといって1日も立たずに戻ってきました」
「ああ、そうだな、僕はこの村が大好きになってきた。金儲けもそうだけど、君といると落ち着くんだ」
するとネンネは頬っぺたを真っ赤にさせて、うじうじとしているがそんなこと僕は気にせず。
「いつまでもここにいていいか」
「いつまでもいてください、わたしは宿屋を経営するのが夢なんです」
「そうかいっその事この村長宅を村長宅兼宿屋にするのもいいかもしれないね」
「それは夢のようです」
「夢は叶えるものだ。僕は君の夢を叶えたい」
「はい」
ネンネの瞳は真っ直ぐとこちらを貫くように見つめていた。
空気が冷たくて、暖かい松明の炎の風がこちらになびいていくのを感じて。
「ここに水資源があればいろいろと便利かい?」
「はい、ヒロスケ殿も見て気付いたと思いますが、洗濯等をする時はとても遠いい川まで行く必要があるのです。なるべく井戸水は使いたくないのです。雨が降らないときの作物の栄養源なのですから」
「なるほど、ちょっと明日の朝になったら川の調査をしてくるよ」
「1人で行ってはいけません、護衛をつけさせますわ」
「助かるよ、今日も空いている部屋で寝かせてもらうよ」
「よろしければ一緒に寝ませんか」
「ぶほ」
それはとんでもない誘いだと思ったのだが。
「いえ、そういうのではなくて、色々なお話をしたくて」
僕はにかりと笑って。
目の前の女性が異世界とはどのような世界かと夢見る少女なのだと思い知った。
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