第15話 プラント増殖しすぎです

 異世界の村にやってきた僕はネンネがいる村長宅に向かった。


 扉を開けると。


「帰りました」


 笑顔でそう告げる。


 そこには上半身が裸で、ピンク色の何かが見えた。

 スカートを中途半端に穿いて、白い下着を見せつけている。


 僕は鼻血を垂れ流して、後ろから地面に叩きつけられました。



 それから5分。

 目の前には顔を真っ赤にさせている村長娘のネンネがいた。


「んもう、いきなり入らないでください、わたしだって着替えするんですから」

「す、すみません」


 顔を茹蛸のようにしながら、僕は途方にくれていた。


 そして何を知らせようとしていたかを思いだしたのだが。


「あと、貴方が持ってきた肥料の力がすごすぎて、雑草まで成長しました。そして雑草はモンスターになり、プラントモンスターが今増殖しています。村人が戦っています」

「プラントモンスターってのは植物のモンスターってところなのか?」

「そういうものです。ですがこんな事は数100年ぶりなのです。なぜならプラントモンスターとは伝説上にしか出てこないと学者達が言うくらいのモンスターです。ですけど、そんなに強くないのです。ただしつこく増殖するので、いくら倒して抜いても抜いても増殖するのです」


「なるほどなぁ、あ、ちょうどよかった。僕さ20個ほど草刈り機を持ってきたんだ」

「へ?」


「この世界には電力の代わりに魔力があるだろう、それを利用すれば、軽油とかがなくても草刈り機が動くと思って」


「その草刈り機を見せてもらってもいいですか?」

「もちろんだよ」


 僕はネンネに草刈り機の扱い方とかを伝授した。

 草刈り機は、やはり魔力だけで動いてくれるので軽油は必要なかった。

 そもそも軽油とかがなくても動くとネンネに教えても、彼女は軽油の存在を知らないという事を忘れていた。



「それとですね、飢えで苦しんで隣村まで逃げていっていた人達が戻りました。そのおかげで、色々と人が増えまして、だいたい50人くらいになりました。皆さん飢えで苦しむ必要がないと驚いています。なので20人の草刈り部隊は作れるでしょう、まずは人を集めてきますね」


 するとネンネは村長宅の屋上へ階段を上って行った。

 それをすかさず追いかけるのが僕の役目だったりした。


 ネンネが屋上から落ちないように見守りつつも。

 屋上には巨大な鐘が設置されており、彼女は容赦のない力で鐘を鳴らした。

 僕とネンネは地上に戻ると、15分くらい待った。


 そこに30名くらいの人々が集まってくる。

 その中にはウィルソンがいた。

 彼は僕を見つけると走って抱き着いてきた。


「ヒロスケ殿ではありませんか、少し前はお世話になりました」

「いえいえ、僕もお世話になりましたよ、スライムハンターのウィルソン君」

「えへへ」


「まったくウィルソン坊やには悩まされるよ、さっきだってプラント一体も倒せないじゃないか」

「るせぇ、ラングン」


 相変わらずマッチョなラングンとは仲が悪いウィルソンであった。


「あまり子供をいじめるなラングン、さてヒロスケ殿がいるから、何か考えがあるのだろう? 村長」


 ネッティーが冷静沈着に告げる。

 ラングンが農夫のまとめ役なら、ネッティーは畑や畑仕事をする統括と言ったところだろう。



「おいら、プラント大嫌い」


 

 突然大きな声で叫んだのは、すごく太った男性だった。


「あの人は引きこもりの肉屋のディボンドという名前の方なのですが、少し知能の遅れがあるのです。そのせいか両手は黒ずみ、誰も近づきたくないようで」


 実は、手稲総合病院にて同じような病気を持つ人がいた。

 それはディボンドよりもひどくなっており、両手が真っ黒になり、切断を余儀なくされていたそうだ。


 だが彼は薬草団子で回復した。


 しかしディボンドも薬草団子くらいは食べているはず。

 なぜ効かないのか、いや効いているから切断しなくて済んでいるのだ。


 恐らく異世界のものを異世界で使用するとあまり効果がなく、

 異世界のものを現実世界の日本に持ち帰ることで化学反応が起きているようなのだ。


 ということは一度薬草団子を日本に持ち帰って、また持ってくれば。


 それ以前に数個ほど薬草団子持ってきていた。


「おいら、めんどくさいこと嫌い、両腕痛くて、嫌だ」


 ネッティーが近づいてくる。


「あいつはああ言ってるけど、さすがは肉屋、斧の扱い方が達人級で次から次へとプラントをばったばった倒す。彼は必要なんだ」


「よし」


 僕は決意すると、ディボンドのところの真正面に立つ。

 体の大きさは横と縦で、結構なでかさだ。

 

 化け物だと勘違いされてもおかしくないだろう。


 顔形を見るとどうやら、彼はダウン症の可能性があった。


 障がいの部分は治療できないだろうけど。



「その両腕を見せてくれないか」

「うん、いいよ」


「これは、やはりか、お風呂に入っているか? 腐ったものを素手で触っているか?」


「うん、おいら母ちゃんと父ちゃんが死んでから入ってない」


「どのくらいなんだ?」


 ネンネがこちらを見ると。


「恐らく5年くらい、ディボンドの両親が亡くなってからそのくらいがたつ」


「ではディボンド、お風呂に入るようにしないとな、あと腐っている肉などを触らないように、手袋とかはないのか?」


「腐ってる肉をこねくりまわすと気持ち悪い、だけど気持ち悪いから最高」

「はぁ、このままいけば、ディボンド、両腕を切断しないといけない、両腕が腐りかけている」

「切断いや」


「ならこの団子を飲んでみてくれ」

「うん分かった」


 ディボンドとの僕のやり取りを沢山の村人たちが見つめていた。

 ディボンドは団子を飲み込むと。


 その奇跡的な現象が現れる。

 この現象を僕は手稲総合病院で見ている。


 右腕と左腕が同時に綺麗になっていく、ぴかぴかと傷口がなくなり血で汚れていた箇所もなくなる。


 体にまで到達していた黒ずみは石鹸で洗われているようになくなり、そこには真っ白くなったディボンドがいる。


 なんとダウン症の症状まで治してしまう。


 僕は驚愕していた。


 ダウン症までも治してしまうということは、脳味噌の状態を治したということなのか?

 理解に苦しむ中。


 ディボンドはこちらを見ていた。

 すごく太っているのは変わらないが。


「村長さん、色々とありがとうございます。これからは毎日お風呂に入って、両腕を清潔にします。腐っている肉は手袋をはいて処理します。この恩は絶対に忘れません、何か問題があればディボンドを探してください」


 村長のネンネは唖然と口をぱくぱくしている。

 ネッティーは目をこすってこれが現実かと疑っている。

 ウィルソンとラングンは爆笑しだした。


「やっぱヒロスケ殿には叶わない、あんたはこの村のヒーローだ」

「ヒロスケ殿はやっぱりすごいんだ。すごすぎて涙がでちゃう」


 ラングンとウィルソンが爆笑していると。


 僕も気持ちがよくなってくる。



「さて、みんな、提案なんだがこの草刈り機を使ってみないか?」

 

 そこにいた30名の村人たちは興味深そうにその草刈り機と呼ばれる鉄の塊を見ていた。


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