第14話 スライムの素


「なぁ、兄貴、このスライムの素も会社に持って帰っていいか、何に使えるか本格的に研究がしたい」

「それならいいが、1つの瓶ほど残してもらいたい、僕のほうでも研究してみる」

「兄貴ならなにか見つけてくれそうだ。じゃ、兄貴、俺は鉱石とスライムの素と薬草団子2個と、薬草2個ほどもらってくぜ」

「ああ、無駄にするなよ」

「たりめーよ」


 僕は林介が巨大倉庫からいなくなるのを手を振って送り出した。


 スライムの素を1瓶ほど持っているので、それをもって改良された研究所にやってくると。


 まずは瓶に入れられているスライムの素をスプーンで取り出した。


 お湯の中に入れてみる。

 何も反応はなく、いつものスライムの素があるだけだ。


 次は窒素を取り出す。

 どうやら一通りの実験道具を集めて置いてくれたらしい。

 弟よありがとうと心の中で思いつつも。


「ありがたく使わせてもらおう」


 スプーンに入れたスライムの素を窒素で瞬間冷凍にする事に成功する。


 後はこのスライムが地面に叩きつけられたら割れるだろうか?

 

 と興味本位ながらやってみると、恐ろしい事が起きた。

 それは地面に落ちたスライムの素はコンクリートの地面を粉砕していた。


 まるで巨大なハンマーで殴ったかのような。


 つまりこのスライムの素を凍らせると、壊れやすくなるのではなくて、とてつもなく頑丈そのものになる事が分かる。


 次は手のひらサイズにスライムの素を取り出す。

 本当に理科の実験とかで作る様なスライムそのものに驚きつつも。


 陶芸家のようにぐねぐねとマッサージをするようにスライムの素を柔らかくしようとする。


 次に茶碗のようなものにして、また窒素で凍らせる。


 次に地面に投げるとしかも思いっきり、そこは鉄の部分であり、まさか鉄に勝てる訳が無いと思っていた。


 しかし現実はそんなに簡単なものではないし、簡単に予想がつくほど現実は甘くない。


 茶碗が粉々に砕けるのではなくて鉄そのものがモンスターに抉られたかのように粉砕されていた。


 唖然と口を開いてそれをただひたすら見ている僕は拳を突き上げて喜んだ。


 その時だった巨大倉庫の扉が開かれリフトの乗り物をうまく利用しながら母親が沢山のリサイクル品を持ってきた。


「ヒロスケ、手伝って、今日は沢山売りに来た人がいたんだけどね、それが新しい物だから、古いものはこちらにしまおうとおもって、あんたらインターネット商売になるものやってんだから、そういうものを売りなさいよ、だから持ってきたわよ」


 母親の長いセリフは舌を高速に動かす事で何とかこちらに伝わった。


「母さん分かったよ」


 そう返事をするしかなく、リフトの乗り物で突然やってきた母親は荷物を巨大倉庫にしまうと、あっという間にリフトに乗ってしまい、巨大倉庫から出ていく。

 シャッターが自動で開いたり閉まったりするのを僕はひたすら見ていた気がする。



 次はリサイクルショップから異世界に持っていくものの厳選をしようと思う。


 この前に電子レンジ10個と冷蔵子10個は持っていった。

 どれもリサイクル品だが。


 今必要だと思われるのは、村の中の施設を充実させる事と山賊などの侵略とか、もしかしたら発展した村に嫉妬して近くにある国が侵攻してくる恐れがある。


 電子レンジとか冷蔵庫などを奪おうと考える国だってあるだろうし。


 村の中で裏切り者だって出るだろう。


 それらはライトノベルの読みすぎだって言われるだろうけど。

 それくらいの準備をしていてもいいのだ。


 その分ライトノベルの国造り小説系には色々と助けられる点はある。


 その時だった家具の中で異彩を放っていたのは、草刈り機だった。

 全部で20個ほどある草刈り機。

 というかなぜ、そのようにでかい草刈り機が20個もあるのか謎だが。


 名札には1万円と書かれてあり、これが高いのか安いのかわからない。


 電子レンジ10個と冷蔵庫10個はリサイクル品から持ってきたとはいえ、お金はちゃんとレジに入れてある。


 いくらいらなくなったものでも商品は商品だと亡くなった父親は言うだろうから。


 サラリーマン時代に稼いだお金はあるけど、この調子でリサイクル品を持っていけば僕は破産するだろう。


 なので、薬草団子とか鉱石とかに今は希望を置いている。


 僕は20万円を母親に渡す。

 ちょうど夜中でリサイクルショップが閉まってしまったのでひっそりとレジに入れる事が出来なかった。


「あんた草刈り機を20個買って、戦争でも始める気?」

「そんな所だよ」

「まったく、あんたはお金苦しいんでしょ10万に負けてあげる」

「それはうれしいけど母さんは大丈夫なの?」

「そんな事は気にしないの、母さんは母さんでなんとかやるものよ、それにさっき林介がいろいろと寄付してくれたし」


「はは、林介らしいや」

「そうだよね、いつからあんなにクールになっちまったんだが、ガキの頃はあんたの後ろばかりついていったのにね」

「僕もそれは思う」



 2人して爆笑する。


 リアカーの準備をする。

 手で引っ張るもので、昔からあるものだ。


 そこには20個の草刈り機が乗せられている。


 裏倉庫には沢山の武器がある。 

 だけどあの武器達はすごく特別で、もし敵に奪われたらと考えると恐ろしい。

 のでしばらくは草刈り機で戦ってもらう事にしました。

 さぁモンスターを草刈り機で倒すのですと呟いている所を妄想する僕であった。



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