灯火
とけい
第1話 はじめまして
君との恋の始まりは、余りの布で作られたアンティーク風のテディベアだった。
春の風が優しく頬を撫でていく時は、いつもあの時のことを思い出してしまう…
私、花高 美桜は頭に乗った桜の花びらを掴みながらこの春の見本のような空を眺めながら小さな溜息をこぼした。
_あの日、君(鈴木 和)と初めて「おはよう」と言葉を交わしたのは、3年前のこの日…
あの人の事を思い出すたびに、私の頬を風以外のものが伝う。
……「お、おはよう!!」
すごく大きな鈴木の声は、廊下の端から端まで聞こえそうだった。
私は、思わず「っぷ。変な人ね」なんてぶっきらぼうに応えた。
そしたら彼、顔を真っ赤にしちゃってもう1回私に、「おはよう!」って言ってきたの。
なんで、もう1回言ったのは分からなかったけど、「おはよう」って私もニヤケながら返した。
彼は、嬉しそうにそのまま席に着いた。
それが高校1年の時の君。
高校2年は…
クラスは離れたけど、君のことはよく知っていた。
彼は、有名人だもの。高校生にして、芸術のコンクールで大賞を取って、今じゃスター。
凄いなー。ほんとに君は私の手の届かない場所ばかり行って私の事を上から見物してるみたい。ほんと、そういう所ムカつく。
その頃の彼は、キラキラに光ってる天の川を一生懸命、走ってる少年みたい。
これが、高校2年のときの君。
「高校3年の君は、、ってどうして、君がそんな事を私に聞くの?」
っと、私は小首を傾げながら鈴木に聞いた。
鈴木は、真面目な表情で「ひみつ」っとだけ応えた。
私は、不思議に思いながらも話を続けた。
「3年の時の君は…」そこで、言葉が止まってしまった。
「僕は?」
「君は、3年の時……ごめん、思い出せないや」っと、苦笑した笑みを見せた。
彼の顔を見ると、今にも目から大量の雫が溢れんばかりに目を真っ赤にして、私が悪いのか分からないのに悲しくなって、思わず
「なんかごめんね…」と言ってしまった。
灯火 とけい @aikachapy0821
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