第一話
十二月二十四日 クリスマスイブ
「ほらトナカイ、準備をせい」
聞き慣れた声のはずが俺に焦りを与える。
「サンタの爺さんよ、あと十分待ってくれないか」
「いやじゃよあんたの十分じゃ十時間になりかねん」
「チッ。老いぼれが俺様の貴重な時間を奪いやがって、誰が望んで毎日、毎日あんなガキたちのために無償労働をしなければいけないんだよ」
「トナカイ、お前は傲慢で強欲じゃの……わしは何匹のトナカイと出会ってきたがお前のような奴は初めてじゃ」
あーあ、始まってしまった。サンタの爺さんの長くて退屈な説教。正直サンタの爺さんの説教はまともに聞いてない。同意を求めるシーンと察したら適当に相槌うつ、それの繰り返しだ、爺さんも途中話を聞かない俺に呆れて説教を終わらすのがいつものこと。
だが……今日は違う、いつもよりも真剣で流しながら聞いてでも分かる悩んで選んだであろう言葉。それに妙な違和感を感じる。
「なぁ、爺さん今日は何かデカい記念日でもあるのか?」
「はぁ? お主は何を言っているんだ?」
さっきまでもかなり俺に呆れていたが、今はその何倍も呆れた表情でこっちを見ている。
「お主は今日クリスマスイブということが分からないのか! まったく、何であんたみたいなトナカイを拾ってきたかのぅ。情けない」
そうか、今日はクリスマスイブ。だから爺さんは朝から忙しそうにしていたのか……
それにしても、よくも今日がクリスマスイブと説明するだけでそんな余計な一言を言えるな。
「爺さん、あまりトナカイを怒鳴り散らかすと寿命縮むぞ」
「うるさいわぁ! 余計なお世話じゃ」
また、一段と声の大きさを上げてこっちを怒鳴ってくる。俺も少しイラつき始めて口を滑らしたのは悪かったと思うが流石にここまで怒る必要はあるだろうか……
「はぁ~ もういいトナカイさっさと荷物の準備をしてこもい」
もう、俺にあきれ果てた爺さん…… その姿は少し俺の心を縛り付ける。
お鼻が赤いと困ります しんたく @sintaku
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