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「お前さんがこの鬼達の親玉じゃな……」

「お、お前は……?」

「ワシはお前さんに対抗する組織の棟梁とうりょうじゃよ。なぁ、話し合いをせんか?」


 おばあさんはいつでも殺せると言う殺気を放ちながら、鬼のボスに交渉を求めます。その気迫に負けて、ボスはこの提案を飲みました。


「分かった。何が望みだ」

「まずは鬼達を鎮めてくれ。ワシらだけで話をしようじゃあないか……」


 こうして、鬼のボスとおばあさんでのサシの話し合いが始まります。そこで鬼の事情と人間の事情のすり合わせが行われました。鬼達は貧乏で強盗のような事をしなければ生きてはいけなかった事、このまま殺し合いがエスカレートすれば悲劇の連鎖が止まらない事、みんなが幸せになるためにはどこかで手打ちが必要な事、その手打ちとして、鬼が連れ去った人達は鬼達自身が連れ戻して開放する事……。


 おばあさんがその気になれば鬼のボスですら簡単に解体される――。その恐怖もあり、おばあさんの要求はどれもすんなり通りました。鬼はもう人間には手を出さないと撤退を申し出ましたが、おばあさんは鬼の事情も知り、平和的な交流を提案します。

 鬼の世界の名産品で交易しようと言うこの申し出に、鬼のボスも驚きました。


「い、いいのか、それで……」

「今まで襲っていたのも貧乏だったからじゃろう? 交易が盛んになればもう他を襲う事もなくなると思うんじゃ」

「ばあさん、俺は猛烈に感動したぞ! その話、任せていいか」

「ああ、任せんしゃい」


 鬼のボスに頼られたおばあさんは、ドンと胸を叩きます。こうして、鬼と人との交易が始まり、鬼も人も供に豊かになったと言う事です。めでたしめでたし。


(おしまい)



 鬼との共存共栄エンド ED31


https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894419987

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