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「一体ワシの財布はどこに行ってしもうたんじゃ……」


 どこを探しても財布が見つからない事に絶望したおばあさんは、フラフラと街をただ歩き続けます。やがて、おばあさんは街のハズレの誰も人がいない空き地に辿り着きました。

 街の中心部は多くの人が行き交っていると言うのに、その場所では不自然なほどに人が1人もいません。


「この街にこんな静かな場所があるとはのう……」


 おばあさんはその静かな世界で思わず空を見上げます。頭上には満天の星空が輝いており、それはそれはとても神秘的な光景が広がっています。


「こんな時でも星空は美しいもんじゃのう……」


 おばあさんが夜空で光り輝く星を見てため息を漏らしたその時でした。謎の光がおばあさんの頭上に現れたかと思うと、そのままおばあさんを引き上げてゆくではありませんか。こうして、おばあさんはUFOに捕らわれてしまいます。


「なんじゃなんじゃ?! 何が起こったんじゃ?」


 おばあさんが混乱していると、そこに宇宙人が現れます。それはまるで妖精のようにふわふわと浮いていて、子供のような容姿をしていました。


「やあおばあさん。びっくりした?」

「何じゃお前さんは? さてはワシを食うつもりじゃな?」

「あはは、違う違う。ボクはおばあさんにやってもらいたい事があって呼んだんだよ」

「ワシに?」


 話によると、この宇宙人――名前はニークと言うらしい――はとある使命を帯びてこの星にやってきたのだとか。その使命のためには地球人の協力が必要との事。

 で、ニークが地球での協力者に選んだのがおばあさんと言う事なのでした。


「協力してくれるよね?」

「ワシに何をさせようと?」

「ふふん、それはスーパーヒロインさ! 世界を救って欲しいんだ」

「ええっ? ワシはもうおばあさんなんじゃが……」


 おばあさんは自分の年齢から辞退しようとします。けれどそんなの百も承知だと、ニークはおばあさんを宇宙船の別の部屋に案内しました。そこには部屋の中央に飾り気のないベッドがあります。


「ここに寝て、後はボクに任せてよ。おばあさんが驚くような美少女にしてあげる」

「まさか、改造……」

「安心して。ボクは失敗しないから」


 ニークの巧みな話術によって、おばあさんはなし崩し的にベッドに寝かされてしまいます。その時点でおばあさんは意識を失ってしまいました。

 次に目覚めた時、おばあさんは自分の体の変化に驚きます。


「体が軽い……どうなったんじゃ?」

「お目覚めだね。もう君はおばあさんじゃないよ」

「ニーク、これは一体……」


 おばさんはまず自分の手を見て、そうして体を見ます。宇宙人の進んだ科学力によって若返った姿がそこにありました。身体機能もすっかり若返っていて、老化によって生じていた節々の痛みはどこにもありません。それどころか、体が驚くほど軽かったのです。

 自分の体の変化に戸惑うおばあさんに、ニークが近付きます。


「はい、鏡だよ」

「嘘、これがワシ? すっかり若返っとる!」

「信用してくれた? じゃあ早速だけど、仕事をお願い出来るかな……」


 ニークはニッコリ笑うと、早速おばあさん……だった美少女戦士に司令を下します。若返ったおばあさんもすっかりその気になって、その後は世界を救うために世界各地で世界を蝕む巨悪と死闘を繰り広げたのでした。


(おしまい)



 美少女ヒロインエンド ED26


https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894419987

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