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「折角用意されているのじゃし、遠慮なく頂くとするかのう……」


 おじいさんはそのおにぎりをひょいと摘むと、むしゃむしゃと食べ始めます。おにぎりはことの外美味しく、5つあったおにぎりをおじいさんはぺろりと平らげたのでした。


「ふう、まんぷくぷー」

「ハハッ! 食べてしまったね。でもそれ、人間用じゃないんだよっ」


 おじいさんが満足していると、背後にはいつの間にか黒ネズミが立っていました。おじいさんはびっくりして腰を抜かします。


「い、いつの間にそこにおったのじゃ……」

「そんな事はどうでもいいじゃない。でも残念だよ。本当に残念だ」

「な、何を……ううっ!」


 黒ネズミの意味ありげな言葉を聞いていたその時です。突然おじいさんに強烈な腹痛が襲いかかってきました。そのせいでおじいさんは何も喋れなくなります。


「あのおにぎりは僕らの世界の食べ物さ。だからおじいさんはもうお終いだね。ハハッ!」


 それが、おじいさんの聞いた最後の言葉となりました。その後、おじいさんがどうなったかは誰も知らないと言う話です。


(おしまい)



 おにぎりつまみ食いエンド ED16


https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894396928

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