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「どれどれ、犬よ、もっとよくワシにその姿を見せてくれんかの?」

「う~っ!」


 最初の内こそ愛想の良かった白犬は、おじいさんがじいっと見つめ始めた途端に態度が急変。ものすごい形相になって勢いよく吠え始めました。


「わんわんわん! わんわんわん!」

「うわあああ~っ!」


 今にも噛みつかれそうな勢いになって急に怖くなったおじいさんは、思わず逃げ出します。気が立った犬もつられるようにおじいさんを追いかけてきました。


「なんて犬じゃああ~! 慣れておるのではなかったのかぁ~っ!」


 追いかけられる恐怖に頭の中を真っ白にさせながら、おじいさんは無我夢中で走ります。気がつくと、地元の村の景色が見えてきました。死にものぐるいで走ったのであっと言う間に戻ってこれたようです。

 気になって振り返ると、もうそこに白犬はいませんでした。


「何とか犬はあきらめてくれたようじゃの。良かった……」


 安心したおじいさんはそこで一気に力が抜けてペタリとその場に座り込みます。見慣れた空を鳶がくるりと舞っていました。それを見ている内に体力も回復したおじいさんは立ち上がり、地元の村へと足を進めます。



https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894221761

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