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「今すぐにでもこのうちわを試してみたいけど、我慢我慢」


 天狗のうちわは大天狗に貰ったもの。気軽に使うべきではないとおじいさんはうちわを懐にしまい、地元に向かって歩き始めます。

 最初は順調に進んでいたのですが、妖怪のお宝を持っていると言うのは同じ妖怪には嗅ぎつけられるのか、おじいさんの行く手を塞ぐように妖怪のゴロツキが現れました。その数は6体。多勢に無勢です。


「おうじいさん、いい物を持ってるじゃねぇか」

「な、何の事ですかいの?」


 すぐにはその『いい物』と言うのがピンと来なかったおじいさんは、素で抜けた返事を返してしまいます。この態度が妖怪ゴロツキの気を悪くさせてしまいました。


「とぼけんな! 今すぐテメェを殺して奪ってもいいんだぞ!」

「ヒイイイッ!」


 ゴロツキの怒号に怖くなったおじいさんはすぐに逃げ出しますが、相手は妖怪、簡単に回り込まれてしまいます。そうして、ゴロツキの親玉はおじいさんの顔に自身の顔を至近距離まで近づけました。


「じいさん、大天狗に貰ったものがあるだろ? それを渡せば何もしねえよ?」

「ここここれか! やるから! どうか命だけはァァァ!」


 恐怖にかられたおじいさんは、あっさりと天狗のうちわを差し出します。親玉はそれを強引に奪い取るとニヤリと笑い、そのまますうっと姿を消しました。目の前の災厄がいなくなり、緊張の糸の切れたおじいさんはその場にぺたりと尻餅をついてしまいます。


「やっぱり妖怪から物を貰うなんてろくな事が起きんものじゃ。くわばらくわばら」


 その後、落ち着いたおじいさんはよろよろろ立ち上がり、地元への旅を再開させました。その後は特に何も起きず、無事に地元にまで帰り着く事が出来たのでした。



https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894221761

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