53
「よーしよしよしよし、いい子じゃあ」
おじいさんは人に慣れていそうなその白犬に近付くと、思いのままになでまくります。犬もおじいさんになでられるままにしていました。
おじいさんがなでるのに満足して、犬の顔を改めてじいっと見ていたその時です。
「じいさん、吉備団子くれよ」
「い、犬がシャベッタァァァ!」
何と、犬が人語を口にしたのです。そのありえない現象に驚いたおじいさんは、勢いよく地面に尻餅をつきます。それを見た犬は更に言葉を続けました。
「なぁ、吉備団子持ってないのかい?」
「あわわわ……」
「ふん、話にならんか。ないならいいんだ。あばよ」
おじいさんの反応から欲しい物が手に入らないのだと理解した白犬は、そのままおじいさんの前から姿を消します。おじいさんはまるで白昼夢のようなこの出来事に、しばらく何も出来ませんでした。
その後、何とか落ち着いたおじいさんはよっこらせと立ち上がり、地元へ戻る旅を再開させます。それから地元に着くまで、何ひとつおかしな事は起きなかったのでした。
地元の見慣れた風景が目に見えた時、おじいさんはやっと安心してため息を付きます。
「ようやく、帰ってこれたわい……」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894221761
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます