第十五段 学生の胃袋
学生の頃というのはとかく胃の容量が大きく、その胃袋を満たすには生半可な量の食事ではとても追いつかぬ。故に、長崎大学は
今やその代わりに学生の胃を満たすのは学生食堂となった。文教通りの方に面した学食には、私も何度となくお世話になった。未だに覚えているのはカレーの特盛であり、両手に
定食の方では、何といっても鶏のから揚げのねぎソースがけが私の愛した一品であった。決して特別なものではないが、五百円もせずに学生の心を満たすだけの存在であり、これだけで大盛の飯はぺろりと消えた。丼物も時に食したものだが、これも良い。医学部のある
さて、このままではこの話が長崎大学物語となってしまうので、西門から外に出よう。すると、すぐ近くの建物の二階に「キッチンけんじ」がある。この店は以前、反対側の東門に喫茶店風の店を構えられていたのだが、私の在学中に移転されて今に至る。移転前は本当に営業しているのかと疑うほどに痛んだ建物であったのだが、移転されてからは小綺麗な店に様変わりしている。ただ、本棚に並べられた漫画の中にはその頃を
小心の 小僧を満たす 鶏の味 残るや
今度は北門を出てからひと坂越えてみる。すると、間もなく住吉の商店街に至り、多くの飯屋が並ぶのを目にできる。その一角に在ったのが「とくとくうどん」であり、こちらも学生の間ではすこぶる人気であった。それもそのはずで、一玉から三玉までが同じ金額で味わえ、三玉ともなると腹具合によっては食い切れぬほどの量となる。たぬきうどんの三玉などはワンコインでおつりがきて、腹がはち切れそうになる。ただ、その真価はジャワカレーうどんにおいて発揮され、その名に相応しい辛味が柔らかな平麺のうどんに絡み、緩やかに腹を広げてゆく。汗だくになりながら、時に付け合わせの野菜で口を癒しつつ食べ進める。時に汁を
背伸びする 小僧に笑う 声満ちる 女将の成せる 店の仁徳
一昨年、長崎を伺った際に前を通ると、そこには白地に赤文字の看板は無く、黄色い看板と並んだ車だけが在った。この日はなんとなく、昼を食いそびれてしまった。
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