第十四段 新大工町
ただ、この地に百貨店があったということは、その近くには豊かな人の営みがあったということであり、この地の市場はその昔、長崎でも有数の繁栄を誇っていた。私が生まれた後もその面影は残っており、市場にもまだ活気は残っていたが、今では商っている店も殆ど無くなってしまっている。その一方で、私の母は高校時代にここへ立ち寄って買い物を済ませ家に帰ることを常にしていたというから、やはり往時は賑やかな市民の台所として在ったのだろう。
私の学生の頃には、まだそうした生活を下支えした場としての在り方を残す店もあった。夏には蜜かけの氷を売り、冬には焼き芋を商う小さな店。看板も出ていたのかもしれないが、名も知らぬ店。しかし、そこで一つ買い求めて食べ歩けば、周りから人々の声が響き渡るような気がして
この地において私は青春の一端を過ごすことになるのであるが、それは
成人する前後には原付を駆ってこの界隈を練り歩くことが度々あったのであるが、長崎大学は経済学部の片淵キャンパスを近くに備えながら、学生の姿は然程多くはなかった。その原因は当時の私からしても歴然と分かるものであり、それこそその時点で本作の執筆動機に至っても
ただ、未だにその灯は潰えておらず、商店街も市場も僅かながらに息を続ける。考えてもみれば、我が家の近くの
賑わいを 間引いて街は 息をする 長く静かに
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