第十二段 路面電車
広島で路面電車を降りようとして、
「お客さん、足りませんよ」
「ああ、そうか値上がりしたんだった。前のワンコインが安すぎでしたからね」
「いや、まだ足りませんよ」
「あ、ここ、長崎じゃなかった」
このような恥ずかしい思いをしたのも、もう七年は
長崎は路面電車が走る街として有名であり、路面電車を抜きにして長崎を語ることはできない。ただ、路面電車自体は様々な土地にあり、我が青春の地である広島も、安住の地である熊本も
また、冒頭の小噺でも分かるように、長崎の路面電車の運賃は安い。特に、大人百円という料金になってからは二十五年も値上げを行っていない。消費税の導入や引き上げの際も十円の値上げは便乗値上げであると自らを断じてその値を守った。私が長崎を発つ二年前に百二十円への値上げが行われたが、
さて、実際に路面電車に乗って市街地を行くと、長崎もそれなりに広いような錯覚を覚える。それは緩やかな運航により
その一方で、この路面電車の走るところを超えてしまえば、長崎の市街地は途切れてしまう。学生の頃に書いた随想で、その一端の
こうしたことを考えながら一昨年、
しかしながら、と思う部分もある。幼少のころに
席を立つ 心の名残 惜しみつつ 今日も電車は チンチンと鳴く
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