第十一段 ホテル
長崎駅前に
このケーキブティックさんのクグロフは洋酒を帯びたレーズンの導きに合わせて、しっとりと焼き上げられた生地と
菓子食わば 良しと唱えて 王冠の 散りし歴史を 眺むクグロフ
これに対して、同じく「ニュー」の名前を冠したホテルニュータンダは大浦に面し、古き良きホテルの面持ちを残している。穏やかな塩の眺め、石畳を踏みしめた後のこの在り方は長崎を堪能するには十分な舞台装置となるに違いない。この近くにグラバー園もオランダ坂も大浦天主堂もあり、中心地へのアクセスが良いとなれば立派なものであろう。
しかし、私が知るこのホテルの在り方は、そのような観光地を巡る外の客に対してのそれではなく、地の人に向けたサービスである。土日のランチタイムにはバイキングの提供をしていたのであるが、幼少の私はそれを何よりの楽しみとしていた。母からの
その
ないない尽くしで迎えた私の成人であるが、その様を眺めていた給仕の思いはどのようなものであったろうかと、今にして思う。あくまでも陰に徹したかの男性は、熟達した間合いでサービスを提供してくださった。そのような場が当時は残されていたのであるが。
その後、私が就職してからはここを父と二人で訪ねるのが一つの
父の背は 未だ遠しと 子は笑う 柱のごとき ホテル眺めて
もう四年は訪ねていないが、次の
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