第17話 拒絶反応はアルカリ性

自殺未遂から、一週間と数日経過した。


不瀬は、ふと現実的なことを思い出した。


会社...


今回の出来事の、発端である。


どうしよう...

迷惑かけているし...

何て言おう...

どういう顔で出ていけばいいの...?


頭の中は、黒色に近い深い青色の不安で

すぐに一杯になった。


母親曰く、会社からは一ヶ月の休職が出ているそうだ。


不瀬は、頭を抱えた。


会社の人とは会いたくない。

私を知っている人と会いたくない。


どす黒い青色は溢れた。




親友から久々にチャットがきた。

「元気にしてるか?」


してるわけない。


親友に心配をかけないように、

チャットを続けた。


そこで、不瀬が苦しんでいた間

親友は結婚していたことを知った。

式は挙げてなく、婚姻届を提出したのだと。


おめでたかったが、正直、

素直に喜べなかった。


光と影

そんな対立的位置に

自分と親友はいるのだと知った。


眩しすぎた。

親友の言うことが凄く眩しすぎた。


「前向きに、ポジティブにいこう」

正論だけど、

重たく、きらびやかすぎた。


その眩しさに、目を瞑りつつ

綴った言葉で会話を続けた。


「元気出せよ。ネガティブだと悪いもんが寄ってくるぜ?」


眩しさは、不快感と苛立ちに変わった。


しかし、親友は私を励ますために

言葉をかけてくれていると思うと


自分の醜さに気づいてしまう。

辛くなってくる。


薬は時と場合を間違うと、毒になりうる。

そう感じた。


彼と自分を嫌いにならないために、

不瀬はそっと、

距離をあけた。


申し訳なさが生まれたが、

しょうがないと鍵をかけ、

胸の奥にしまった。


彼に察されないように

傷つかないように

光と影を優しく分断した。







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