第15話 煤けた黒色は、黄色を見つけた。
腕の傷は、まだ痛む。
あの出来事から2日。
仕事は会社から休暇を貰った。
頭の中は、雨上がりの雲みたく、
光が指しては、また遮ったり、
言わば、不安定だった。
不瀬は、ただ病室の緑色を見ていた。
誰がくれたのかわからないが、
根(足)を切られた、花だ。
不自由になっていることを知らないかのように、
綺麗な明るい緑が、居た。
ふと思い返した。
言葉を放ったのはいつだろうか。
だが、答えは不要だった。
まわりには人はいなかった。
訪ねてくるのは、木漏れ日と、それにあやかって主張する埃だけだった。
言葉を放たなくていい。
自分を着飾らなくていい。
その瞬間、それが自分の本来の姿だと感じた。
頭が軽くなったような気がした。
自分だけの世界
「コンコンッ」
ノックの音
崩壊。
「不瀬さん、ご飯ですよ。」
朝食?昼食?
わからないな。
不瀬は、看護師さんに言葉は発っさなかった。
ただ、柔らかい表情と、温かい視線で発した。
看護師は、その表情に一瞬驚いたが、すぐに笑顔で返した。
伝わった。
今までは、聞き手の一方的なコミュニケーションツールだったが、
その温かさに、不瀬は感動していた。
でも、傷はまだ痛む。
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