第10話 雪は冷たく、視線はそれ以上につめたく

あれから、雪と真っ赤なおじさんが降る季節になった。


あの頃の新芽は、砂漠に植えられ、

死んだ魚の目、干からびた涙袋

そんな言葉が似合う人間になっていた。


伸びきった髪、光沢のない革靴

ただ泥水を吐くようなコーヒーメーカー

とにかく、マイナスな言葉が似合う人間になっていた。


コミュニケーションに支障が出ていた。

先輩に質問したら、日本語教室が始まった。

最初は、「お前は日本語を話せてない。」から始まった。

私はジャブで死んだ。


メンタルは粉々に砕け散った。

ヒビは、少しの振動で粉々になるぐらい、

侵食を続けていた。


「こう言うんだ。繰り返してみろ。」

耳に言葉が入ってこなかった。

パニック状態だった。

また怒られる。

また日本語を話せてないといわれる。

22年間生きてきた、すべてを否定される。


必死に聞こうとしたが、

やっぱり頭に入ってこなかった。


質問するのが嫌になった。

いや、怖かった。


質問しても、欲しい回答に対して、かなりの時間と精神疲労がついてくる。


作業が遅れる。


最悪なデフレスパイラル。

地獄は地獄を呼び、苦しみは広がっていく。




暴走した、頭は止まることが出来なくなり、

遂に言葉がでなくなった。


ただひたすら、涙とゲロが出てくるだけだった。


苦しい。

なぜこうなった。

何がいけなかった。

何をした。

長男だからしっかりしろ。


ポジティブになるはずだった言葉が、

恨みを込めて、心を刺してきた。


たたただ、その苦しさから救われる方法を探していた。



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