第9話 一度入ったヒビは速度を増す。
それでも、私は社会人だ。
個人的には大きい出来事だったが、
会社としては、止まってはいられない。
一週間ほど、味気のない日々を過ごした。
支えをなくした私は、このままではダメだと
穴を修復しようと行動した。
プロジェクト内の効率化を求め、
現状の作業の無駄を洗いだし、
それに対しての改善を提案した。
あの光ってた頃の自分なら、
なにをするか。
それを思い出しながら、自分を震いだ足せた末の行動だ。
すると、リーダーは、それを「お前には、関係ない」とただ一言。
まあ、新人の提案ということもあり、
リーダーは、リーダーの考えがあるのだろうと、考えた。
それであれば、お互いにプロジェクトの利益を考えての行動だと。
この行動は、小さなことだが、
自分のなかでは、大きな意味があった。
新芽を生やそうとしたのだから。
それからの日々、
炎上プロジェクトということもあり、
残業とスケジュール遅延は、日常だった。
日に日に、新芽は干からびていくのを感じた。
朝、ミーティングでのスケジュール遅延報告、
メンバーたちの苛立ち、
疲労
先輩たちは、後輩の面倒をみる余裕もなく、
見てくれていた先輩は、負担の重さに
表情、言動、目線から苛立ちと疲労を感じるようになった。
毎日のように出てくる言葉は
「疲れた。」
春のような光は、秋と共に枯れ
枯れた部分は、膿み
よく振った炭酸水のように、表面に溢れてくる。
地獄は以外と近くに潜んでいて、
それを私は今見ている。
なんだかな。
あの頃は。
どうしてかな。
頭に出てくる言葉は、
過去にすがるようなもので、
でも、過去にすがるしかなかった。
最悪で、現状最適な解だった。
いつ、終わるのかな。
終われば変われるのかな。
どうして、楽しそうに仕事してるの?
月が変わり、プロジェクトのメンバー親睦会を行うことになった。
乗り気ではなかったが参加した。
メンバーの顔は、お酒の力もあり
笑顔が見えた。
私はトイレに行くため、個室の襖から出た。
一人の空間になり、自分の中の心を整えた。
少し、士気が揚がったように自分で思えた。
トイレからでて、
個室の襖を開けようとしたとき、
会話が聞こえた。
社長とリーダーの会話だ。
ドラマや漫画で欲あるような盗み聞き?のような感じだ。
『儂、話で聞いたんじゃけど、
不瀬がリーダーに提案した時、強めに関係無いと振り払ったそうじゃな?』
おうおう、
軽めの説教か?
よく聞くやつだ。
「え?あ、はい。言いましたよ。」
『なんで、そんなこと言ったん?』
「あぁ、なんか生意気じゃないですか?」
???
はてなマークが頭を横切り
それが割れたとき、自我に戻ってきた。
その言葉を聞き、
私の中の何かが、崩れる音がした。
あぁ、そっか。
リーダーは、あの時、
プロジェクトの利益を思って、
あの返答をしたのではなく、
ただ単純に生意気という私情で返したのか。
考えもあるわけではなく。
私は襖を開けるか迷った。
正直、このまま帰りたかった。
帰りたかった。帰りたかった。
何故か私は、顔を整えた。
笑顔に。
いつの間にか、上手くなっていた。
上面の笑み。
それはまるで仮面のよう。
心と体が分離していくような感覚を覚えた。
なにも無かったように、笑顔かつ無邪気に振る舞った。
内心、怒りと情けなさで蒸し返し、
気がおかしくなりかけていた。
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