帰国




新婚旅行に来たグアムで、沙羅と俊弥はカズヤという日系の血を持つ孤児に出会い、事情を聞いて日本総領事館に相談に訪れた。



「そのカズヤくんを引き取って、日本に連れて帰りたいと・・・・・・しかし、それは彼自身が望む事ですか?」



領事はあくまでカズヤ自身の気持ちを知りたいと告げ、2人は彼の気持ちも聞かずに勢いで動いてしまった事を反省していた。



「すみません、彼が僕達に色々話してくれて、放って置く訳にはいかないと思い・・・・・・」




2人がすみませんと頭を下げようとしていた所、なんと応接間にそのカズヤ本人が入ってきた。



「お2人に付いてきていたようで」



と、スタッフが事情を話し、領事も快くカズヤを招き入れる。



「ようこそ、君がカズヤくん?」



「うん!トシヤとサラがここに入ってくの見エテ、ボクもハイってミタんだ、漢字が書いテタカラ、ニッポンのタテモノダヨネ」



「そうだよ、カズヤくんはこのお兄ちゃんとお姉ちゃんが好きなの?」



「うん、サラはママに似テルし、トシヤもヤサシクテ、ダイスキ」



「そっか、でも沙羅さんも俊弥さんも僕達も君の家族を奪った人と同じ民族だよ?」



「でもニホンジンみんなガわるいひとジャナイ、いいひとのホウがイッパイイル、グアムにもいいひとわるいひとイル、サラもトシヤもハジメテあったボクにヤサシクシテクレタ、ダカラこのひとタチナラ・・・・・・」



その続きは幼いながらに気を遣ったのか言えないカズヤに領事は微笑む。



「大丈夫だよ、それに手続きも心配ない、沙羅さんは政府に影響力持ってるから」



「領事さん、私ひっとことも井浦博文の曾孫とか言ってないはずですが・・・・・・」



「・・・・・・僕、いえ、私も沙羅さんとは深い縁がありますから」



領事が柔らかい女性口調で話し始め、沙羅はすぐに気付いたその魂の存在に鳥肌が立つ思いであった。




「あ、あなたは本物のエリザベス・ジョンストン・・・・・・の転生体ですか?」



「そうよ、久しぶりね」



俊弥もびっくりするが、カズヤはまだよく分からないようで、沙羅と領事のおじさんは古い知り合いだったと説明する。



「あ、あの、私ずっと貴方に伝えたかった事があって・・・・・・体を乗っ取って、最後にはあんな死に方をしてご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!それと、あなたの家族を置いて日本に行った事も・・・・・・」



「いいのよ、私はずっとあなたを恨んだ事なんてない、それにこうしてまた会えたのも運命だと思うから、あの時あなたが私の体で色々やってくれた恩返し的な事ね」



「そんな恩返しなんて、こちらこそ・・・・・・」



というわけで、エリザベスの転生体深山領事は沙羅達が帰国する前に、カズヤに関する手続きを済ませてくれたのである。




日領サイパン島 アスリート国際空港



「サラ、トシヤ、アリガト・・・・・・なんかユメみたい」



「ううん、深山さんのおかげよ、それにこちらこそ、私達の所に来てくれてありがとう」



「それにこれからは僕達がパパとママだから、何も気を遣わなくていいからね」




かくして、カズヤを無事に引き取る事ができ、3人で帰国する家族であった。





















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