出会い
平成26年 7月 米領グアム
やはりこの世界でもこの島はリゾート地として栄え、人気を博しており、沙羅と俊弥も新婚旅行に訪れていた。
「つってもサイパンはやっぱ日本て感じだし、せっかく来るならグアムよグアム」
「そうねえ」
一応、日本領側のサイパン島とテニアン島もリゾート地として多くの旅行客を迎え入れてはいるものの、内地の日本人にとってはせっかく遠い南の島に来るなら異国情緒にも触れたいというわけで、沙羅達も隣のグアムに来たわけである。
が、ビーチのあちこちから日本語や朝鮮語や台湾語やが聞こえてきて、実際は異国情緒も何もないのである。
「ま、まあこんなもんよね」
「逆に言葉が通じそうな人ばっかりでよかったね」
とまあ、2人とも無理矢理前向きに考え、周りは気にせずにビーチではしゃいでいると、現地の子供が声をかけてきた。
「ニホンジン?ボクトアソンデヨ」
「君、日本語できるの?」
「ウン、ボクノママニホンジン、ニホンゴもチュゴク語とかモイッパイおしえてモラッタ」
片言ながらしっかりした日本語の文章を話すその少年は、沙羅の顔をじっと見つめて言う。
「オネエチャン、ママに似てタカラ、声カケチャッタ」
「そうなんだ、それで・・・・・・」
少年が1人なのを気にかけ、ママは?と言いかけた所で、沙羅はその少年が声をかけてきた理由が分かった気がした。そして、或いは彼の両親や親族とも・・・・・・
(俊弥、この子身寄りがないのかも)
(だけん1人で?)
(多分・・・・・・私達が人多いとこから離れとったけん話しに来てくれたんじゃないかな)
2人がコソコソと話していると、少年は寂しそうに笑い、ごめんなさいと言って立ち去ろうとするが、俊弥も沙羅も引き止め、彼が話しやすいようにビーチで遊びながら話を聞く。
「そういえばボク、お名前聞いてなかったね」
「ナマエ?」
「そうそう、your nameよ」
「ボクのnameはね、アルフレート・カズヤ・エリクソンダヨ」
「お姉ちゃんはイノウ・サラよ」
「僕がサントー・トシヤ、ファーストネームは違うけど、夫婦・・・・・・marriage couple?だっけ・・・・・・だよ」
「シンコンリョコウ?」
「そうそう、それでアルフくん?カズヤくん?はいつもビーチで遊んでるの?」
「カズヤでイイよ、パパもママもカゾクみんな、こないだノじこデシンジャッテ、ボクはしせつニイレラレテ・・・・・・」
しかしカズヤはどうも施設の子供たちとも馬が合わず、いつも抜け出してビーチで遊んでいるという。因みにこないだの事故というのは、この数ヶ月前に起こった、島の漁船達と日本船籍の大型客船が衝突し、漁船の乗組員達が多く犠牲となった事故の事である。その漁船の一隻に乗っていたのが、カズヤとその家族で、カズヤだけが助かったのである。
「そう・・・・・・ごめんね、話しづらかったよね」
「ウウン、ダイジョウブ、おネエチャン達みたいにこうやってアソンデクレル人もイルし」
カズヤは笑顔を見せてはいるが、 その瞳の奥は笑っていないように見えて、心配な沙羅と俊弥は滞在期間中、彼となるべく一緒に居るようにし、更にハガッニャの日本総領事館に赴いて、ある事を相談していた。
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