結婚
平成25年 6月 熊本県 西久保町 井浦家
「改めて、沙羅さんと結婚させてください!」
そう言って頭を下げているのは無論、沙羅が長らく付き合っている彼氏の三藤俊弥である。
久しぶりに彼の苗字を書いた気がするが、そんな事よりなぜ満18歳にもなっていないのに、沙羅が彼を連れて実家に来たのかというと・・・・・・
「数えで18って勘違いしとったんねあんた達は」
瑠美が呆れるように、沙羅と俊弥は単純に法律上の18歳を数え年と勘違いしていたのである。
「ねーねもにーにもばかなの?」
小学校2年生の千寿にも追い討ちをかけられ、だんだん小さくなっていく2人である。
「まあ、ばってん俊くんが本当に本気なんは分かったけん、おっちゃん達はなんも心配しとらんよ」
「そうそう、こぎゃんお転婆ば貰いたいなんて、寧ろ私達が俊くんに頭下げにゃんたい」
「ママそれどぎゃん意味や、まあ、ばってん、私が俊弥ば貰うみたいなもんだけん、そぎゃん畏まった挨拶はいらんとじゃないと?って言うたらこいつ「いやいや僕はちゃんとしたいけん」て、なんやお前いつの間にかそぎゃんむしゃんようなってから」
口調は乱暴だが、俊弥の頭を掴んだままわしゃわしゃと撫で回す沙羅である。
とまあ、そんなこんなで1年後・・・・・・
平成26年 6月吉日
俊弥と沙羅両名の結婚式が神前にて行われ、正式に2人は夫婦となった。
なお、両名の希望で婚姻後も別姓を名乗る事とした。
ちなみに披露宴等は特に行われなかったが、数日後実咲達がひっそりとお祝いをしてくれるというので、2人は指定された会場へ向かった。
「なんでグラウンドなん」
確かに思い出の場所ではあるが、こういうのって普通居酒屋とかじゃね?とか思う沙羅が優茉に問う。以前、優茉は今後出てこないかもと言っていたが出てくる機会あってよかった。
「実咲に聞いてよ、あん子がここにしよう言うたっだけん」
と、優茉が指さす先ににやり顔の実咲が海軍の儀礼服姿でスタスタと歩いてくる。
「なんでここにしたかって?そらここは2人の思い出の場所で、これから生涯バッテリー組むあんた達の門出ば祝うとに一番よか思ったけんね」
「そらよかばってん実咲ちゃん、なんで僕防具付けられとっとね」
俊弥は到着してすぐ男子達によって、キャッチャー用の防具を付けさせられていた。
「そらあんた、またここでバッテリー組んで2人の生涯バッテリーのスタートにしようちゅうこったい」
「なるほど、粋な事考えるね」
粋なのかは分からないが、とりあえず納得はする夫婦である。
「はい、じゃあ俊くんはキャッチャーボックス入って、沙羅もマウンド行って、それとファーストに・・・・・・」
「ちょ、なんで守備いると?」
沙羅がつっこむと、実咲はまたニヤリとして答える。
「最初は本当に沙羅が投げて、俊くんが捕って終わりと思たばってん、折角なら皆でちょっと試合しようかなって、あ、私も勿論参加するけんね」
さっきは粋だなあとか思っていたが、実咲も美輝も優茉も皆、友達の結婚祝いとか理由付けて遊ぼうって魂胆だったんかと沙羅と俊弥は妙に合点が行く。
というわけで、少年時代に戻ったように皆とワイワイ野球を楽しむ夫婦であった。
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