映画
帝都東京の楽しい旅から熊本へと帰って来た沙羅は、お土産を渡す為に遠い方から友人達の家を回り、最後に実咲の家に来たわけであるが、海軍士官である実咲の父も久しぶりの休暇で帰宅しており、せっかくならと少しお邪魔する事になったのである。
「林少佐殿、お久しぶりです」
「沙羅ちゃん、少佐殿はやめてよ、家におる時は普通の父親たい」
「いやあ前前世の兵隊だった時の癖で・・・・・・」
直立不動の沙羅を見てクスクスと笑う実咲と母親。
そんな挨拶を済ませたところで、実咲の部屋へ入ると、沙羅はすぐさま姿勢を崩す。
「はぁ〜、やっぱ将校様って思うと緊張するわ」
「まだそんなに記憶あっとね?エリザベス大統領の時なんか最高司令官だったてから」
「だって本当、軍人さん、それも尉官クラス以上って目付きが違うんだもん、まあエリザベスの時はなめられんようにって気張ってたし」
「それにしては結構好き勝手やったよね、映画、ビデオで見たよ」
「映画?」
「エリザベス・ジョンストン〜合衆国初の女性大統領〜って第二次大戦の終戦50年くらいの時に日米共同で作られた映画、知らん?」
「え?博さん何も言わんかったけど・・・・・・」
「知っとるやろうけど、言いづらかったんじゃないと?」
「ね、ねえ、ちなみにその映画どぎゃん感じ?」
「えーと、エリザベスさんの大統領なる前、沙羅の魂が入るちょっと前くらいから始まって、色々言われながらも大統領選当選して、就任してからは自由奔放に各地を飛び回ったり、 日本の難民救出作戦に協力した事とか、沙羅から聞いた話ほぼやっとるよ」
「日米共同って事は日本での話もかなり・・・・・・?」
「うん、元々エリザベス大統領が超親日だったてのは教科書にも書いてあるくらい有名だけんね」
「まあ確かに」
どうやら現代においてエリザベスは歴史上の偉人的扱いを受けているようである事は、沙羅も気付いていたが、映画の存在は今の今まで本当に全く存ぜぬといった様子で、ちょっと見てみたいかもと思い始めていた所へ、実咲がDVDがあるから見るかと聞いてきたので、見せてもらう事にした。
3時間後
「結局最後まで見ちゃった、ちょっとお邪魔するつもりが長くなっちゃったね」
「よかよ、それより本人?が見た感想はどぎゃんね?」
「政治とかに関しては私の思い出と変わらんばってん、ちょっとかっこよく描かれすぎて変な気持ちになったわ」
「ああいう1人の人物にフォーカスするのって得てしてそういうもんやし」
「いや、戦時中のクリスマス会談のシーンとか私あんなに厳かにしとらんかったし」
「『・・・・・・無条件降伏以外、認めないわ』だっけw」
「ちょ、やめてよー」
エリザベスが沙羅だったと知ってから改めて見た実咲は、時折笑いそうになるのを堪えながら画面を見つめていたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます